金融審議会の報告書を麻生太郎金融相が受け取らないことについて、委員21人の受け止めを尋ねるアンケートを、朝日新聞社は実施した。審議会会合では「素晴らしい成果」などと評価の声が委員から相次いでいたが、アンケートには「誤解を生む恐れがある」などと半数が回答を拒絶した。
アンケートは1問。金融審議会の作業部会の報告書「高齢社会における資産形成・管理」を麻生氏が受け取らないと決めた判断について、「理解できる」「理解できない」「その他」の三者択一で選んでもらい、自由記述欄で理由や意見を尋ねた。13日に本人や勤務先の大学や企業に送り、17日夕までの回答協力を求めた。
委員は大学教授、エコノミスト、金融機関関係者、弁護士ら計21人。19日までに返答があった11人のうち、10人は「今回は遠慮したい」「報道でさらなる誤解を生む恐れがある」「取材は受けられない」など回答を断る返事だった。質問票に答えたのは1人のみ。連絡がつかないか、何らかの返事を締め切りまでに得られない委員も10人いた。
アンケートは実名を前提としたが、辞退した委員の一人は19日、匿名で取材に応じた。麻生氏の受け取り拒否について「大問題だ。気に入らないから受け取らないとなると、多様で自由な議論ができなくなり、政府のあり方として非常によくない。民主主義の根幹が問われる問題」と話した。
辞退した別の委員も、麻生氏が受け取り拒否を決めた11日は朝日新聞の取材に応じ、「議論の前提の『2千万円』に関心が集まってしまった。今回のことで思考停止になってしまうとすれば残念だ」と答えていた。ほかの複数の委員も他メディアの取材に応じたが、与野党の批判が過熱し、当事者がモノを言いにくい状況が広がっている。
実名で唯一回答を得られたのは読売新聞東京本社の林田晃雄・論説副委員長。選択肢は「その他」を選び、「報告書の取り扱いは麻生大臣が判断されるべきものと考えます。ただ、国民の資産形成のあり方について長期にわたり議論した結果が、今後の政策の検討にまったく生かされないとすれば、残念です」とした。
■原案段階は好意的意見…