防衛省は20日、ロシア軍のTU95爆撃機が同日午前に2回にわたり、太平洋上の日本の領空を侵犯したと発表した。航空自衛隊の複数の基地から戦闘機が緊急発進(スクランブル)し、退去警告を行った。外務省は在日ロシア大使館に抗議した。
防衛省によると、午前8時53分ごろに沖縄県の南大東島の近くで、TU95爆撃機2機が3分弱にわたり領空を侵犯。2機はそのまま北東方向に飛行し、午前10時21分ごろにはうち1機が東京都の八丈島付近で約2分間、再び領空に入った。その後、2機は北方四島の付近を通過してサハリン方面に飛び去ったという。防衛省は、那覇基地など複数の空自基地から戦闘機を緊急発進させ、領空に近づかないよう通告したり、侵犯した際には退去警告を行ったりした。
防衛省によると、2015年9月に、北海道の根室半島沖でロシア機とみられる機体の領空侵犯が確認されている。13年2月にはロシア機が北海道の利尻島近くで、同8月には福岡県の沖ノ島付近で領空侵犯をした。昨年度、ロシア機に対する緊急発進は計343回だった。防衛省幹部は「意図は不明だが、今回の飛行ルートを見る限り、ミスとは考えにくい」と話した。
ロシアのインタファクス通信によると、ロシア国防省は20日、日本の領空を侵犯したとされるロシアの爆撃機について「国際法を厳密に順守しており、他国の領空は侵犯していない」とする声明を発表し、領空侵犯を否定した。同省によると、2機は日本海や東シナ海、南シナ海などの上空を14時間以上にわたって飛行したという。(伊藤嘉孝、モスクワ=石橋亮介)