和牛の受精卵と精液を中国に不正に持ち出そうとしたとして家畜伝染病予防法違反などの罪に問われた飲食店経営の前田裕介(51)と無職の小倉利紀(64)の両被告に対し、大阪地裁は25日、前田被告に懲役2年執行猶予3年(求刑懲役2年6カ月)、小倉被告に懲役1年2カ月執行猶予3年(同懲役1年6カ月)の判決を言い渡した。松田道別(ちわき)裁判長は「家畜・畜産物に対する国際的な信用を失墜させた」と述べた。
判決によると、両被告は昨年6月、大阪市住之江区の港で、農林水産省動物検疫所の輸出検査などを受けずに、和牛の受精卵と精液の保存用ストロー365本を手荷物として中国・上海行きのフェリーに載せ、不正に持ち出そうとした。
判決は、両被告が「以前から同様の不正輸出を繰り返し、常習性がある」と指摘。前田被告は知人の中国人から報酬30万円で和牛の受精卵などの運搬を依頼され、小倉被告に輸出を指示するなど主導的な役割を果たし、小倉被告は従属的な立場だったが実行役として重要かつ不可欠な役割だったとした。一方、両被告が起訴内容を認めて反省している点などを踏まえ、執行猶予をつけた。(米田優人)