将来がんになるリスクを下げるため、遺伝性の乳がんの患者が予防目的で、がんのない乳房を切除する手術を、2016年8月までの1年間に49人が受けていたことがわかった。日本乳癌(がん)学会などは、こうした手術を公的医療保険の対象にするよう求めており、厚生労働省も近く、検討を始める。
乳がんは女性のがんで最も多く、年に約9万5千人が診断されている。患者の3~5%は、遺伝性のがんの原因とされるBRCA1、BRCA2遺伝子に変異がある。生涯で乳がんにかかる割合は変異のある女性は40~90%で、全体の9%に比べて高い。
調査は、専門医らでつくる日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構が実施。15年9月~16年8月末までの1年間に、聖路加国際病院や昭和大病院など7施設で検査した1527人を対象に調べた。うち297人にBRCA1、2の遺伝子変異があった。遺伝子変異のある人の約20%にあたる49人が、がんのない反対側の乳房内の乳腺部分を取り除く手術を受けていた。
がんのない乳房を切除すると、切除しなかった人と比べて死亡リスクを半減させることが海外の複数の研究からわかっている。日本乳癌学会は昨年、学会の診療指針を改定。この遺伝子変異がある乳がん患者に、がんのない乳房を予防的に切除する手術を「強く推奨する」とした。
だが予防的手術は保険適用外のため、費用は全額自己負担。施設ごとに異なるが、乳腺の全摘出と再建術で100万~200万円とされ、費用を理由に手術をためらう患者も多いという。
調査をした聖路加国際病院ブレストセンター長の山内英子さんは「この遺伝子に変異があることは生涯変わらない。経済的な状況によらず、患者が選べるようにサポートする道を作ってほしい」と話す。
6月には、がん細胞の遺伝子変…