京都大学から昨夏、筋肉が衰える難病「顔面肩甲上腕型筋(がんめんけんこうじょうわんがたきん)ジストロフィー」に関する論文が発表された。iPS細胞を使って実験を繰り返した論文の筆者は、この難病の患者だった。「病気を甘んじて受け入れるだけにはなりたくない」と、研究の道を選んだ。(後藤一也)
異変に気付いたのは東京にいた小学6年のときだ。京都大学iPS細胞研究所で特定研究員をする本田充さん(30)は当時、自分が走る姿を撮ったビデオに驚いた。腕を前後に振るつもりが、横に振っていた。
中学生になると、利き手の右腕の筋肉が落ちて腕を上げることも難しくなり、小学生で始めたバイオリンが弾けなくなった。部活動の卓球もうまくできなくなった。周りから「動き方が変」と、からかわれた。
病名にたどり着いたのは、中学2年の冬。現在の国立精神・神経医療研究センター(東京都)で診断された。「ゆっくりと症状が出ます。改善策はありません」と医師から告げられた。
病気を受け入れられず、右腕を…