タクシー大手の第一交通産業(北九州市)が、ミャンマーでウナギの養殖に挑んでいる。同市内に立つミャンマー式寺院の運営を社長が支援したことから縁がつながった。世界的な課題となっているウナギの生態保護も考えながら事業化を目指す。
太さ「男性の腕」、2キロ級も
ミャンマー最大の都市、ヤンゴン中心部のインヤー湖畔にあるミャンマー国立ヤンゴン大学水産学科。地下水をひいた、コンクリート製の水槽の中を黒く細長い姿が泳ぎ回っていた。ニホンウナギと同じウナギ類だが、東南アジアに広く生息するビカーラ種。成人男性の腕ほどの太さのウナギも見えた。
「大きいもので重さ2キロにもなります」。気温が40度を超える中、養殖の責任者、坂元正さん(47)が汗をぬぐいながら話した。養鰻(ようまん)歴20年のベテランで、第一交通に請われ、鹿児島県の養鰻(ようまん)会社から出向している。今は長さ5メートル、幅2メートルほどの三つの水槽で約380匹を試験養殖している。
日本国内では主にタクシーやバスの運行、不動産を手がける第一交通産業。ミャンマーで養鰻を目指すようになったのは、2011年末にいったん閉鎖したミャンマー式寺院「世界平和パゴダ」(北九州市門司区)の再開に、田中亮一郎社長(60)が資金援助したのがきっかけ。お礼に訪れたミャンマーの高僧に請われ、12年秋、ヤンゴンに支店を開いた。
現地で自動車整備の指導や部品調達を開始。さらなる展開を目指して田中社長が現地を訪れると、地元有力者にヤンゴン郊外のコイの養殖場を案内された。餌はビカーラ種の稚魚。ニホンウナギの稚魚は不漁が伝えられていたが、ビガーラ種の稚魚はミャンマーの川で数多く捕れると聞いた。
成魚に養殖して加工し、日本へ輸出しようと考えた。地元企業と合弁で設立した水産加工会社をヤンゴン大と提携させて、16年夏、試験養殖を始めた。田中社長は「日本では今後も、特に地方で人口が減る。本業が好調なうちに、将来性のある場所で新たな事業を手がけていかなければ」と話す。
しかし、いざ養殖を始めると、気候や水質、何よりもウナギの肉質が日本と違った。
皮厚く、ぶよぶよ…エサに試行錯誤
現地の川で捕れた成魚を食べると、皮が厚く、ぶよぶよしていた。肉には血合いが多く、泥臭さもあって日本人の口に合うものではないと思った。
「良いエサを与え、水質を管理…