栃木県・馬頭の野球部選手は6人しかいない。
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那珂川町役場のそばにあるが、最寄り駅のJR烏山駅からバスで40分。生徒数の減少は深刻で、普通科の定員は2018年度、120人から80人に減った。それでも入試の定員割れは解消していない。
部員が9人そろわず、昨年に続いて連合チームで大会に出場する。今年の四校連合(益子芳星・那須・馬頭・さくら清修)は益子町から那須町まで南北に60キロほど広がる。今年の夏は足利南が抜けて、さくら清修が加わった。合同練習はほぼ中央にあり、交通の便がよいさくら清修(さくら市)でやることが多い。
平日の放課後は各校とも知恵を絞るしかない。部員数人では「当たり前」の練習も難しい。今春、3人の1年が入部した馬頭は、守備要員が足りないので、フリー打撃はネットに向かって打つ。守備練習では頭の中でイメージした実際にはいない相手に向かって送球を繰り返す。
「6人でもやれる基礎練習は他の高校の何倍もやってきた。この状況でどんな練習ができるのか、常に考えている。イメトレの種類は多い」。野球部長の戸村真一さんは胸を張る。
3年の鈴木智也さん、1年の陽也さんは兄弟だ。中学に続き同じユニホームを着た。2歳違いだが、背丈は近い。打ち方も守り方もそっくり。いつも一緒の監督でもよく間違える。
単独校の出場は智也さんが1年の夏が最後だ。それでも陽也さんは兄とプレーしたくて馬頭を選んだ。5人兄弟の次男と三男。小さいころから2人でキャッチボールしてきた。それは今も変わらない。言葉を交わすより投げる球で互いの気持ちや体調がわかる。
移動に時間がかかるので合同練習は週末だけだ。学校行事もあり、毎週2回練習できるわけではない。本番に向けて練習試合も組まれる。サインプレーは各校自習してくるが、連合チームの井沢崇典監督(さくら清修)は「連係プレーを練習する時間が足りない。もっと一緒に練習したい」ともらす。
週末だけの合同練習に陽也さんは戸惑うことが多かった。「各校で練習の仕方が違う。連係の取り方も違う。プレーを合わせるのが大変だった」。心細いこともあったが、兄がいることが大きな支えだった。「文句を言いながらもやるべきことはやる」。そんな兄の姿勢を参考にしてきた。
「2人は前に出て仕切るタイプではない。でもやることをしっかりやってチームを支えてくれる」。連合チームの藤田暢起(のぶき)主将(さくら清修)の信頼は厚い。
馬頭も3年が引退すれば部員は3人だ。陽也さんは「いつまで部活ができるかわからない。これが最後になるかもという気持ちで夏に望みたい」。(平賀拓史)