西湖大学の設立後で初となる独自科学技術成果産業転化プロジェクト、西湖バイオ医薬科技(杭州)有限公司がこのほど、1億元(1元は15.3円)近くの規模にのぼるPre-A融資の調達完了を発表した。浙江在線が伝えた。
同社のコア技術は高暁飛氏の「幹細胞と器官再生」実験室によるもの。高氏らはパーソナライズされた新型赤血球治療技術を開発し、痛風や血友病、フェニルケトン尿症などの珍しい病気、さらにはがんの治療に用いることができる。
高氏の主な研究対象は人体内の赤血球だ。具体的には、体内の少量の血液を抜き、その造血幹細胞を抽出し、薬を持つ赤血球に変えてから体内に戻す。こうすることで各種疾患を治療する目標を達成する。
高氏は、「赤血球は人体内で数が最も多い細胞だ。赤血球には細胞核がなく、遺伝子突然変異を起こさず、非常に安全だ。こうしたメリットにより、赤血球は細胞治療技術の開発に非常に適している」と語る。
よく知られている痛風を例にすると、その原因は体内の尿酸値が高く関節中に結晶が形成されることで、深刻な炎症反応及び関節痛を引き起こす。そのため痛風治療の方法の一つは、尿酸値を下げることだ。
科学者は尿酸オキシダーゼに目をつけた。それは尿酸を人体にとって安全なグリコリル尿素に変えることができる。グリコリル尿素は溶けやすい化合物で、しかも腎臓から対外に排出されやすい。しかし人体内の尿酸オキシダーゼは量が非常に少ない。1970年の時点で、すでに尿酸オキシダーゼを赤血球に入れてから体内に移すことで、尿酸値を引き下げることが可能ではないかという説を打ち出した人がいた。しかし当時の科学技術水準の制限により、このアイデアは理論の段階に留まった。
巨人の肩に立ち、高氏は理論を現実に変えた。彼は赤血球内に移送ルートを作ることで、より多くの尿酸オキシダーゼを赤血球に乗せ、体内に移す。尿酸オキシダーゼを速やかにグリコリル尿素に変えることで、痛風の治療効果を発揮する。このアイデアはすぐにマウスによって効果が確認された。
推算によると、このような1回の治療は人体の正常な赤血球の1%の量しか必要とせず、つまり、痛風患者から10−30ミリリットルの採血で済むことになり、人体にとってほぼ負担にならない。
簡単に見えるが、当然ながらこれには「少量の血を抜くだけで、十分な量の体外赤血球を再生できるのか」という、一つの技術的な難点が隠されている。
高氏のチームは画期的に末梢血の少量の造血幹細胞を利用し、細胞の体外培養・分裂を行うことで大量の赤血球を取得する。同時に高氏らは安定的な、同細胞に的を絞った赤血球分裂培養体系・条件を構築し、体外赤血球の自己複製回数を7−10回に拡大し、これまで報告されていた分裂のペースを大幅に上げた。
同社の痛風に関する革新的な治療法は現在、浙江大学医学院付属第二病院と臨床協力を行っている。(編集YF)
「人民網日本語版」2020年6月3日