北京にいながらにして西湖のカエルやセミの鳴き声を聞くことができる。このほど、浙江省杭州市西湖区が打ち出した自然音アルバム「西湖を聴く--自然の音」が正式にリリースされた。このアルバムでは、音声共有サイト「喜馬拉雅」の人気パーソナリティーで自然音レコーディングを手がける「声谷」を起用し、杭州にある西渓湿地や竜塢茶園などの景勝地で自然の音を録音。「85後(1985年-90年生まれ)」の自然音レコーディングエンジニアである「声谷」は、このアルバムによってさらに多くの人に知られることとなった。北京日報が伝えた。
「声谷」の本名は趙志勤さん。10数年前に学校を卒業した後、杭州にやってきた。趙さんは美術デザイナーや商品の体験士の仕事をした後、インターネット関係の会社を経営していたこともある。にぎやかな都市に暮らしてはいたが、焦りや不安にとらわれているように感じ、眠れないこともしばしばだった。睡眠を促すために、趙さんはネットで大自然の音、つまりよく言われるところの「ホワイトノイズ」を探すようになった。しかし、クオリティの高い音声素材が少ないことに気づき、やがて自分で録音しようと思うようになっていった。
2013年、福建省の海辺への旅行が趙さんにインスピレーションを与えた。趙さんは、「早朝4点過ぎのことだった。砂浜をゆっくりと歩き、やわらかく体をなでる風を感じた。特に、寄せては返す海の波の音は、とても奥行きが感じられ、立体的で、とてもいい音だった。聞いているだけで催眠効果があるように思えた」と振り返る。彼はその音を録音することにした。
杭州に戻ると、趙さんは録音に関するカリキュラムをインターネット上で集め、さらに4000元(1元は約14.9円)以上かけてレコーダーやマイク、マイクブーム、ヘッドホンを購入。忙しい仕事の合間を縫って、週末になると録音器材を背負って深い森に入り、湖や渓流を訪れて、大自然の音を録音し、自然の音を集めたアルバムを1枚また1枚と製作していった。
2015年、趙さんは収集してきた大自然の音を喜馬拉雅にアップするようになった。数年が経ち、「声谷」は今ではすでに50万以上のフォロワーを抱え、アルバムの再生総数は8000万回を突破。そして都会に住む多くの人々の心を癒している。なかにはお金を出して趙さんが録音した鳥の鳴き声や水の流れる音、雷雨の音を聞きたいという人も多く、喜馬拉雅側によると、コンテンツ課金の波に乗り、現在では「声谷」アカウントの年間収入は100万元以上にも達しているという。
趙さんが「声谷」名義で製作した多くの「音のアルバム」のうち、「雨の音」が最も人気がある。こうした音を聞きながら眠りにつく人もいれば、アルバムで故郷のコオロギの声を聞いたように感じるという人もいる。そして土の香りをかいだような気持ちになり、幼い頃を思い出すという人までいる。そこでは風や水の音が聞こえ、鳥がさえずり、花が香り、カエルやセミが鳴いている。(編集AK)
「人民網日本語版」2020年7月31日