ヘリコプターから降りてきた堅熱益西さん(撮影・徐馭堯)。
堅熱益西さんのオフィスを訪れると、彼女は読書中だった。「最近、観光客がますます増えている。日々の遊覧飛行業務のほか、故郷の美しい景色や文化を彼らにより上手に紹介するため、もっと本を読もうと思っている」と話す堅熱益西さんは、自分の将来の夢について滔滔と語り、その澄んだ大きな瞳は活き活きと輝いていた。
堅熱益西さんは、西蔵(チベット)自治区拉薩(ラサ)雪鷹通用航空公司(雪鷹通航)で初のチベット族女性パイロットだ。普段は、遊覧飛行業務を担当しているほか、ヘリコプターによる救援業務も担当している。そんな彼女は、数年前はラサ市当雄(ダムシュン)県寧中郷の貧困家庭出身の学生だった。
2016年、ラサ第二中等職業技術学校に通っていた彼女のもとにかかってきたクラス担任からの一本の電話が、彼女の運命を変えた。クラス担任は電話で、ある企業が貧困家庭出身学生の中からパイロットを募集することを彼女に知らせ、面接試験を受けるよう勧めた。「パイロット?」と彼女は何度も繰り返し確認した。なぜなら耳にしたことが本当なのかとても信じられなかったからだ。
雪鷹通航は、江蘇若爾通用航空発展集団とラサ市政府が共同で投資・設立した企業で、緊急救援・医療救護・観光保護・遊覧飛行などの航空飛行業務を主に展開している。設立当初、「通用航空+貧困者支援」という発展コンセプトが打ちたてられ、貧困家庭の貧困脱却を促す目的で、同社はラサの貧困家庭出身学生に的を絞り、パイロット16人と整備員12人を募集することを決定した。
2017年1月12日、堅熱益西さんは江蘇省蘇州市で学び始めた。「初めて飛行機に乗った時は、緊張と興奮でいっぱいだった。そして将来自分が飛行機を操縦する様子を繰り返し想像したものだった」と彼女は当時を振り返った。同年2月14日は、彼女にとって生涯忘れられない日となった。指導員の龐暁明さんに付き添われ、彼女は初めて実機飛行実習に臨んだ。「ヘリコプターの手動操縦では、位置確認がとても難しかった。龐先生は私に手取り足取り指導してくれただけでなく、手のひらでピンポン玉をつかむことで、操縦における細やかな動きを訓練させた」と堅熱益西さん。実機飛行実習がない日も、彼女は懸命に理論学習に取り組んだ。1年間の努力が実を結び、彼女は飛行理論試験と飛行技術試験に無事合格した。
堅熱益西さんの母親は、「空の上に連れていって、空の上から故郷の草原を見せてあげる」と娘が幼い時に言っていたこの言葉が、まさか本当に実現する日が来るとは思ってもいなかったという。堅熱益西さんによると、2018年に彼女は両親を乗せてラサの上空を飛び、2人はとても感動したという。
「ある時、観光客を乗せて羊卓雍措(ヤムドク)湖の上空を遊覧していると、お客さんは非常に興奮して、チベットの美しい景色を絶賛した。その時、とても達成感を感じた。現在の月給は1万元(約15万8千円)以上で、家の暮らし向きもどんどん良くなっている」と彼女は話した。
現在はすでにその暮らし向きが軌道に乗っている堅熱益西さんは、自分の力の一部を郷里への奉仕に注ぐようになっている。非番になると実家にたびたび帰る。彼女の弟や近所の子供たちは彼女の周りを取り囲み、いろいろな事を彼女に尋ねてくる。彼女はいつも、皆に飛行に関する知識を伝え、将来大きく羽ばたくための種を彼らの心に撒いている。
「先祖代々から牧畜民だった我が家では、私が女性パイロットになるとはだれも想像してもいなかった。私がパイロットになれたのも、チベットに対する国からの支援のお陰で、現在の素晴らしい政策のお陰だ」と彼女は感慨深げに語った。
チベットでは、数年前から各種措置を講じ、「上下貫通・左右連接」という人材育成の「立体交差橋」建設に力を入れ、現代職業教育システムの構築に取り組んできた。教育における貧困者支援と同時に、産業分野での貧困者支援政策も展開している。2016年以来、チベット自治区における投資額は累計400数億元(約6300億円)に達し、産業貧困者支援プロジェクト2800件以上を実施し、貧困人口約23万8千人の貧困脱却を促し、70万以上の農牧畜民がその利益を受けた。ますます多くの住民が、党及び国の優れた政策のもと、自己の努力を通じて、自分の人生を変えている。(編集KM)
「人民網日本語版」2020年11月23日