米国では飼料規制が甘く、牛海綿状脳症(BSE)にかかった牛の数が減っていない可能性があるとの試算を、食品安全委員会プリオン専門調査会(吉川泰弘座長)で12日、吉川座長が明らかにした。同時に、現在の米国の感染牛の割合は、日本の約5分の1だとの推計も示した。
同調査会は、米国とカナダからの輸入牛肉の安全性評価の一環として、日本、米、加でのBSEの広がりを比べてきた。試算と推計は、評価結果を示す座長案の一部として公表した。
米国はBSE牛から飼料を作り、豚や鶏に与えることを認めている。吉川座長は、こうした飼料の10%程度が誤って牛の口に入り、新たなBSE牛を生むと推定。長期的に見ると感染牛は増減せず、一定の頭数を保つとの試算を示した。
日本では、01年10月に牛を含めたほ乳動物すべてのたんぱく質を飼料に使うことを法律で禁止したため、新たに生まれるBSE牛は急速に減っていると推定した。
80年代以降、英国などから米国に入ったBSE牛の頭数、肉骨粉の量などを考えると、BSEの病原体が米国に侵入した量は、日本への量の10~1.5倍以下になるとの推定も示した。
一方、日本の全頭検査や米国の牛の調査結果から、日本では年間100万頭当たり5~6頭のBSE牛が出るのに対し、米国は同1頭程度と推計した。ただし、日本の牛は約450万頭だが、米国は約9600万頭と20倍以上いる。このため、米国はBSE牛の頭数が多くても率は低くなる。
吉川座長は「大量に牛肉を輸入すれば(実際にはBSEなのに、分からないまま)日本に入る量は増える。率と頭数の両方での評価が必要だ」と話した。【高木昭午】
毎日新聞 2005年9月12日 20時21分