07年のG1開幕を飾るフェブラリーSは、3番人気サンライズバッカスが中団から鋭い伸び脚を披露、後続を振り切って初のG1タイトルを手にした。勝ち時計1分34秒8は、レコードに0秒1差と迫る好タイム。2着に2番人気ブルーコンコルド、3着には9番人気ビッググラスが飛び込み、3連単5万4210円の配当は、同レースの歴代1位となった。
「勝つ時はこんなもんなんやな」。サンライズバッカスが余裕十分にVゴールへ飛び込んだ時、音無師は興奮を覚えるよりもホッと胸をなで下ろした。
一昨年の武蔵野Sでカネヒキリを破って以来1年4カ月、2着は2回あったものの勝ち星から見放されていた。好仕上がりと思っても展開が向かない…何度となく悔しい思いをした。この日の勝利は、そのフラストレーションを一気に昇華させるほど完ぺきなレースぶりだった。
スタートは半馬身遅れたが、普段に比べれば上々だった。「いつになく二の足がついた」(安藤)ことでスッと流れに乗ると、中団のやや後方外めを追走。逃げたダイワバンディットとトーセンシャナオーが引っ張るペースはそれほど速くなく、それでも折り合いはピタリ。直線まで待っての追い出しだが、ここでも抜群の反応を見せた。
残り300メートルで鞍上がゴーサインを送ると、馬場の真ん中を一気に躍り出た。「早く先頭に立ちすぎてヒヤッとした」(安藤)が、杞憂(きゆう)に終わった。2馬身、3馬身と離したところでブルーコンコルドが急襲して来たが、1馬身半差をつけてゴールに飛び込んでいた。
安藤は「ゴール前は足音が聞こえなかったし、やったと思った。(手綱を取って)3戦目。想像以上に強かったね。大きなレースで最高の競馬ができた」と胸を張り、“アンミツ”こと兄・光彰のJRA騎手試験の合格祝いともなった。
2つ目のG1タイトルをモノにした音無師も感無量。「馬体重が2キロしか減っていなかったのは予想外だが、馬の形は良かった。レースも外の偶数枠でスタートのロスが少なかったし、その直後も外に馬がいないポジションでスムーズに前に取り付けたことが大きい。馬場が悪くなったこともこの馬にはプラスに働いた」と名手の騎乗を称え、満面の笑みを見せた。
G1挑戦5度目で栄冠をつかんだバッカス。今後は地方の統一G1で新たなタイトル獲りに挑むことになりそうだ。
▼サンライズバッカス 父ヘネシー 母リアルサファイヤ(母の父リアルシャダイ)牡5歳 栗東・音無厩舎所属 馬主・松岡隆雄氏 生産者・北海道日高町ヤナガワ牧場 戦績18戦6勝 総収得賞金2億7100万4000円 主な勝ち鞍はフェブラリーS、武蔵野S。3番人気の優勝はホクトベガ以来11年ぶり2頭目。
スポーツニッポン 2007年2月19日