パソコン遠隔操作事件で威力業務妨害罪などに問われたIT関連会社元社員、片山祐輔被告(32)の判決公判が4日、東京地裁であり、大野勝則裁判長は懲役8年(求刑同10年)の実刑を言い渡した。事件では、パソコンがウイルスに感染した4人が警察に誤認逮捕された。検察側は論告で「サイバー犯罪史上まれにみる悪質で重大な犯罪」と強調していた。
片山被告は2012年6~9月、他人のPCを遠隔操作ウイルスに感染させて幼稚園の襲撃予告をしたなどとして、威力業務妨害罪やハイジャック防止法違反罪などに問われた。同被告の遠隔操作により、4人が関与を疑われて誤認逮捕され、警視庁、神奈川、三重、大阪の4都府県警が謝罪した。
検察側は昨年11月の論告で「見ず知らずの第三者を犯人に仕立てることを目的とした巧妙な犯行」と指摘。「刑事司法制度への国民の信頼を揺るがしかねない」と非難した。
片山被告は無罪主張をしていたが、公判途中から起訴内容を認めて自白に転じた。検察側は片山被告の勤務先のパソコンの解析により、犯行に使われたプログラムの痕跡などが得られたとして「自白がなくても客観的な証拠から片山被告の犯行であることは明らかだった」と強調した。
弁護側は最終弁論で起訴内容を認めたうえで、「真摯に反省しており、量刑相場を超えた過大な刑罰だ」として寛大な処分を求めた。片山被告も最終意見陳述で「被害者の方々の証言を聞き内省を深めることができた。これからは犯罪に走らず、自分の罪と正しく向き合って社会復帰を目指したい」と謝罪した。