「鼻水が気になって仕事に集中できない」「薬のせいで仕事中に眠くなる」…こんな悩みをもつ人が急増する、花粉症の季節がやってきた。2015年のスギ花粉の飛散量は、全国的には例年並みか少ない地域が多いが、昨年と比較すると関東や東北では非常に多くなる見込みだ。今まで花粉症には縁のなかった人の中には、「今年こそ発症してしまうかも…」と不安に思っている人もいることだろう。気になる今年の花粉飛散の状況や最新治療について、耳鼻科専門医でNPO法人花粉情報協会の理事も務めるふたばクリニック(東京都新宿区)院長の橋口一弘氏に聞いた。
「2015年は、1シーズンに飛んでくるスギ花粉の数が1平方センチメートル当たり4000個は超えると推測されています。大量飛散となった2011年ほどではありませんが、全国的には昨年よりも飛散量が多い年になるでしょう」
ふたばクリニック(東京都新宿区)院長の橋口一弘氏は、そう話す。ただし、地方によって状況は異なり、昨年と比べると、四国・九州地方は少なめ、北陸・関東甲信・東北地方はかなり多い見込みだ(図)。飛散開始の時期は例年通りで、関東地方は2月第2週ごろと予測されている。今年もつらい春になりそうだ。
図 2015年花粉飛散量を昨年と比べると?
(出典:日本気象協会)
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そもそも、なぜ花粉症になるの?
生まれた時から花粉症という人はいない。それでは、どのような条件がそろって発症するのだろうか。
「花粉症は、飛んでいる花粉をただ吸い込むだけでは発症しません。毎年吸い続けるうちに、花粉を異物として認識する抗体(スギ花粉であれば「スギ花粉特異的IgE抗体」と呼ばれる)が体の中で作られます。この抗体の量がある一定レベルに達したところで、花粉が体に入ると、免疫システムが作動し、異物である花粉を排除すべく、一斉攻撃(アレルギー反応)が始まるのです」(橋口氏)。それが、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状として現れるというわけだ。
このアレルギー反応のメカニズムは、しばしばコップと水の関係で説明される。体内で抗体(水)が作られ、コップの中にたまっていく。コップの中にあるうちは、その人の免疫システムは正常に働くが、その人のキャパシティ(コップの容積)を超えてあふれると、花粉を異物と認識したアレルギー反応が始まる―という説だ。抗体を持っていても生涯アレルギー反応を起こさない人もいるが、そういう人たちは「コップが大きい」と解釈される。
発症の可能性がある「予備軍」は3割も?
この仕組みについて、橋口氏は「体内で抗体が増えるだけではなく、何らかのプラスαのきっかけが加わって起こるのではないか」との考えを示す。「ある研究で住民のIgE抗体を調べたところ、スギ花粉特異的IgE抗体を持つ人は約半数(55.5%)いるのに、実際にスギ花粉症を発症している人はそのうちの7割でした。残りの3割の人は発症していない予備軍ということです(*1) 。こうした予備軍の人たちが、例えば疲れたり風邪をひいたりして免疫が落ちた状況のときに体に花粉が入ると、それをきっかけに発症してしまうのではないでしょうか」。
こうした個人差があるにせよ、大量飛散年には、予備軍の中から花粉症に“デビュー”する人が増える傾向はあるというから、心の準備は必要だろう。
ちなみに、日本スギが存在しない国から来た人は、早くて約3年以上日本に滞在した頃にスギ花粉症を発症するという。毎年、春に花粉を吸い続けて抗体ができて発症するまでの最短期間は、3年が一つの目安のようだ。
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