【サンパウロ=宮本英威】南米の産油国、ベネズエラ政府は変動相場の外国為替市場をつくる通貨制度改革に乗り出す。輸出の9割を石油に依存する世界有数の産油国だが、最近の原油安で自国通貨の実質相場が大幅に下落していた。自国通貨を過大に評価した固定相場は維持するが、変動相場も解禁せざるをえなくなったようだ。実質的な通貨切り下げとなる可能性が高い。
同国に資産を持つ外国企業にとっては資産評価額の為替差損が膨らむ可能性が高い。米企業は100億ドル超の資産を同国に持つとされている。
マルコ経済・財務・公共銀行相は新たな為替制度について「オープンで自由に参加できる」と説明した。来週から始まる見通し。
変動相場の市場創設によって同国には3つの為替制度ができることになる。1つは1ドル=6.3ボリバルフエルテ(BF)に固定される公式レート。さらに特定の業種、外貨使用目的によって実施する競売形式で決めるレート(SICAD)。そして変動相場制のレート(SIMADI)が新たに加わる。
新制度は変動幅が自由で、外貨の使用目的も問わず、取引の自由度が高いとみられる。1ドル=120~140BF程度で取引されるとの現地報道もある。従来の2つのレートよりも大幅にBF安・ドル高の水準で、現在の闇取引の実勢レート(190BF前後)に近づきそうだ。
新制度を始める背景には、原油安や経済不振で非公式な実勢相場で急速な自国通貨安が進み、公認レートとの格差が開きすぎたことがある。昨年10月上旬時点で100BF前後だった実勢相場は、足元で190BF前後まで下落。非公式の実勢相場を放置すれば、通貨制度の信認が一段と失われかねなかった。
変動相場を認める新制度は実質的な通貨の切り下げとなる可能性が高い。地元コンサルタント会社エコアナリティカによると2014年の加重平均為替レートは1ドル=20.3BF。今回の措置を実行すれば15年には39.8BFになると見込む。
通貨切り下げは輸入品の価格高騰につながりかねない。ベネズエラ中央銀行によると、インフレは年率60%を超え、世界で有数の高さだ。スーパーやレストランでは価格が毎月上がる。ベネズエラ政府は、生活必需品の輸入などには従来の自国通貨を過大評価した固定レートを使うと説明しているが、為替の「1国3制度」が機能するのか懐疑的な見方も根強い。