気候変動データの保護を呼びかけているトロント大のミシェル・マーフィー教授=トロント、小林哲撮影
トランプ米次期政権が、気候変動に関する観測データなどを米政府のホームページから閲覧できなくする恐れがあるとして、カナダや米国の研究者たちがデータの保存活動を始めた。呼びかけたのは、トロント大のミシェル・マーフィー教授(環境政治学)ら。同じ取り組みを進めるニューヨークやフィラデルフィアの関係者も賛同している。
米環境保護局(EPA)がネット上で公表している膨大なデータの中から、重要なデータを自動的に集めて保存するプログラムの開発を進めている。数カ月後をめどにできるだけ多くのデータを外部サーバーなどに移し、だれでも閲覧できるようにする。米海洋大気局(NOAA)の気象データなどの保存も検討する。マーフィー教授は「環境データは米国だけのものではなく、全世界のもの。保存するだけでなく、証拠に基づいた環境政策を求めていく」と話している。
トランプ氏は、温暖化対策に否定的で、オバマ政権が進めてきた化石燃料への規制強化などの見直しを公約に掲げている。次期政権でEPA長官に就任するプルイット・オクラホマ州司法長官や、エネルギー省長官に内定したペリー前テキサス州知事は、強硬な反規制派として知られる。次期政権に都合の悪い観測データなどは、閲覧しにくくしたり、新たな観測を行わなくしたりする可能性が指摘されている。(トロント=小林哲)