トップレベルの投資運用担当者や投資戦略の専門家は、欧州の金利低下がマイナス圏にまで至ることで、金融システムの機能が深刻な影響を受ける可能性があり、この先1年の間に指標となる金利が上昇する見込みはほとんどないと注意を促している。
ベルンにあるスイス中銀。金融機関の預金にマイナス金利を適用している=AP
価格とは逆の動きをする債券の利回りが今年に入ってから0%を下回る現象が欧州各国の国債や一部の社債まで急速に広がっている。欧州中央銀行(ECB)の量的金融緩和策もあって金利が低下していることは、借り入れコストが史上最低の水準まで下がっていることを意味する。しかし、フィナンシャル・タイムズ紙(FT)のインタビューに答えた金融の専門家たちは、懸念すべき副作用を指摘している。
■年金基金や保険に多大な影響
FTがロンドンで開催した債券業務に関する会議に参加した英資産運用大手のスタンダード・ライフ・インベストメンツでグローバル戦略責任者を務めるアンドリュー・ミリガン氏は「これは世界の債券市場にとって全く新しい環境の誕生となる可能性がある」と述べた。
「実際にマイナス金利がずっと続くとすれば、巨額の資本の流出入が一部でみられるだろう」と同氏は言う。
独立系資産運用会社、グリフォン・キャピタル・インベストメンツのエグゼクティブ・ディレクターであるヘンリー・クック氏は、「(マイナス金利は)年金基金や保険会社などに対して、そのモデル全体がどう機能するかについて多大な影響を与える」と指摘した。同氏は「これらの機関投資家は大きな圧力にさらされているが、人は強い圧力を受けるとさらにリスクを取るものだ」とつけ加えた。
マイナス金利とはつまり、投資家はお金を貸すために金利を支払わなければいけないということだ。英運用会社アシュモア・グループの元リサーチ責任者、ジェローム・ブース氏は「政府が利回りをマイナスにしようとするのは全く問題ない。いい取引だと思う。問題は、なぜ投資家がそうする必要があるかだ」と話す。