中国の電子商取引最大手のアリババ集団とインターネット大手の騰訊控股(テンセント)の出資を受けたタクシー配車アプリ企業2社に対し、ある競合会社が同2社の合併は独占禁止法の抵触回避を狙いとするものだとして異議を申し立てている。
中国の調査会社アナリシス・インターナショナルによれば、「滴滴打車」と「快的打車」の2社だけでタクシー配車アプリ国内市場の99.8%を支配しているという。ところが中国の法規制の下では、独禁法の禁止条項の引き金をひくには市場占有率の高さだけでは根拠として不十分だと、法律の専門家は指摘する。
タクシー配車アプリを画面表示する(1月9日、北京)=AP
競合会社とは、小規模でタクシー配車プラットフォームを運営する「易到用車」で、この2社による合併を阻止するよう中国商務省に要請した。
2007年に成立した独禁法は、合併を意図する企業は、両社合計の国内売上高が総額20億元(3億2000万ドル)を超える場合か、個々の同売上高が4億元を超える場合には、中国商務省が実施する審査を受けなければならないと規定している。
非上場企業である「快的」と「滴滴」は、どちらも業績を開示していないが、配車サービス自体は無料なので収入は限られている。
■専門家「審査の対象にならないだろう」
これら2社は共同声明のなかで「今回の合併で独占禁止法に基づく審査を受ける必要はない。両社のうちどちらの売上高も(審査を必要とする)規定の額に達していない」と説明している。
法律の専門家も、今回の合併案件は恐らく正式な審査の対象にならないだろうとの見方を示している。また、上海にあるホワイト&ケース法律事務所の中国M&A(合併・買収)部門責任者のアレックス・チャン氏は、「今回の件は、新しいビジネスモデルにおける売上高の定義や算出方法が問題になっており、業界関係者のみならず規制当局にも今までにない問題を提示している」と指摘する。
出資元のアリババとテンセントが提供するモバイル決済システムを利用した乗客から「快的」と「滴滴」が契約するタクシー運転手に支払われた料金が両社の売り上げになっていることを立証するのは「難しい」だろうと同氏は言う。
「快的」はアリババからの、「滴滴」はテンセントからの出資比率を開示していないからだ。2社の共同声明文書には、「2社に対し経営支配権を握るかあるいは特別な企業統治権を有する投資家も戦略的投資家も存在しない」と書かれている。
中国最高人民法院は14年に、テンセントの広く普及している簡易メッセージアプリ「QQ」は独占とはみなされないとの判断を下した。ウイルス対策用ソフトメーカーの「奇虎360科技(チーフー)」は、テンセントが「QQ」利用者にチーフーの製品利用を無理やりやめさせるように仕向けたとしてテンセントを訴えていた。
最高人民法院は、チーフーの訴えを退ける際に「市場シェアは単に市場における優位性をはかる大ざっぱな尺度にすぎない」と指摘した。
By Gabriel Wildau in Shanghai
(2015年2月18日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
(c) The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.