【ニューヨーク=杉本貴司】米ウォルマート・ストアーズは19日、米国内で働く時給制従業員の最低賃金を時給7.25ドルから38%増の10ドルに引き上げると発表した。賃上げの原資として10億ドル(約1200億円)を投じる。小売業は製造業などと比べて賃金水準が低いとされる。賃上げの流れが米小売業界に広がる可能性もある。
対象は米国内で働く正規雇用とパートの時給制労働者。約50万人に上る。半年以内に最低賃金を9ドルに引き上げ、新規雇用者を除き2016年2月に10ドルとする。
最低賃金を引き上げることで当面、平均時給は正規雇用者の場合、12.85ドルから13ドルに上がるとしている。店長らデパート・マネジャーは最大15ドルにする。10億ドルの原資には一部、従業員教育などの費用も含む。
ウォルマートはこれまで最低賃金を米連邦政府が定める時給7.25ドルにしてきた。オバマ米大統領はこれを10.10ドルに引き上げるよう、繰り返し議会に訴えている。米小売業では衣料チェーンのギャップがすでに、15年までに最低賃金を10ドルにすると表明した。
「賃金が低すぎる」と批判されてきたウォルマートが賃上げに踏み切ることで、米国内の賃上げ機運に火を付けそうだ。 ジョージア大学の調査によると、米流通業の平均時給は16.47ドルで、民間部門平均より3割以上低い。一方、全米小売業協会(NRF)の調べでは、米国で働く4人に1人は流通業に携わる。流通業で賃上げが広がれば、米国民の所得が底上げされ格差是正につながると期待されるほか、米経済をけん引する個人消費も刺激しそうだ。
ウォルマートは19日、14年11月~15年1月期(15年度第4四半期)の決算を発表した。純利益は前年同期比12%増の49億6600万ドル。米既存店売上高(燃料除く)は1.6%増。電子商取引も順調に増えたことから昨年の年末商戦は堅調な結果だったと結論づけた。