米グーグルが人間だったら、まだ投票権もないほど若い。それでも、1998年に設立された同社はその短い人生の大半を政治問題に巻き込まれてきた。特に顕著なのが欧州においてだ。
同社が10歳になる前、仏独政府は多額の資金を投じて欧州版グーグル「クエロ」を立ち上げようとした(これは予想どおり失敗に終わった)。4年間に及ぶ独占禁止法違反の調査はなおくすぶっており、2014年には欧州議会がグーグルの解体を求めたとされる。グーグルはライバル社と同じほどの敵を抱え、著作権侵害やプライバシー法、税逃れなど多くの問題で議論を呼んでいる。
フランス政府高官(右)とグーグル経営幹部ら。テロへの対処について会合を持った(20日、カリフォルニア州マウンテンビュー)=AP
グーグルはこうした戦いで一丸となるため、欧州の組織を統合して一頭体制にした。規制当局と対立する必要がなかったとしても、これはビジネス的に妥当な動きだ。部署間の競争を喚起するこれまでの体制は、グーグルが提供するサービス内容とは全体的に性質が異なっていたからだ。同社の真骨頂は全く異質のデータを異花受精し、新たに応用することにある。地理的な国境はこのアプローチにそぐわない。
■グーグルの検索、欧州でシェア9割
グーグルが特に欧州と問題を抱えているのは、成功の証しだ。米国での検索エンジンのシェアは3分の2にとどまるが、欧州では90%にのぼっている。同社の秘密のアルゴリズムはネットのトラフィックに頼る者ならだれにとっても重要なもので、ライバルでもある多くの企業もその中に含まれる。同社はメディア各社とは特に苦痛を伴う関係にある。各社は自社のコンテンツが盗まれているという疑念と、ネット検索でひっかからなくなるわけにはいかないという必要性との間でがんじがらめになっているからだ。ある競合メディアは最近、公開書簡で「グーグルは我々を必要としていないが、我々にはグーグルが必要だ」と不満を訴えた。
それでも、政界とのあつれきはビジネスを超えている。グーグルの「世界の情報を整理し、世界の人々がアクセスできて使えるようにする」という使命は純粋なようだが、極めて政治的だ。今は情報の時代であるため、望むと望まざるとにかかわらず、データの世界でこれほど君臨している企業は社会全域で権力を握っている。欧州連合(EU)の市民がネット上での「忘れられる権利」を勝ち取ったように、グーグルの問題には一般市民の懸念から生じたものもある。これは特に欧州でプライバシーに対する懸念が強いことを示している。昨年の判決以降、数十万件にのぼるリンク削除の要請が寄せられている。