東京都が首都直下地震に備え、全国に先駆けて導入した「ランニングストック(流通在庫備蓄)」方式として、石油小売業者の組合からあらかじめ購入した形となっている3億3700万円分の災害時用燃料が、実際には備蓄されていない状態にあることが関係者への取材で分かった。
組合は、都から受け取った代金を備蓄先のガソリンスタンドや油槽所に支払っておらず、燃料の所有権を都に移す契約も伝えていなかった。
都は「燃料は確保されている」としているが、スタンド側は制度自体を理解しておらず、宙に浮いた状態という。災害時に病院や緊急通行車両の活動に支障が出かねない。都の管理責任も問われそうだ。
都と都石油業協同組合・都石油商業組合は、燃料の優先供給協定を締結。東日本大震災で都内も燃料不足になったことから2013年1月に協定を改正し、ランニングストックを導入した。
都と両組合によると、協定では燃料の所有権は都に移すことになっている。しかし、両組合は都から受け取っている代金は「災害時用の前払い金」と認識し、スタンドなどに燃料の確保を依頼するだけで契約はせず、同様の説明をしていた。代金は組合でプールし、年度ごとに都に返還して契約を更新していた。
14年度は本来、ガソリンと軽油はスタンド122カ所で各約3.6キロリットル、計約900キロリットル、重油などは約1850キロリットルを油槽所5施設で保管していることになっている。
都総合防災部の担当者は「契約相手である組合が提出する在庫報告書で、都の燃料は確認している。指摘を受けたので、事実関係を調べたい」としている。〔共同〕
▼ランニングストック(流通在庫備蓄) 企業が生産・販売活動を続けるために保有している在庫の一部を、自治体や病院が備蓄物資としてあらかじめ購入し、企業に保管してもらう方式。緊急時に「品切れ」ということがなく確実に入手できる上、在庫は常に新しいものに置き換わるので、自治体などでは更新が不要という利点がある。