【ワシントン=川合智之】米議会の上下両院は27日夜(日本時間28日午前)、27日深夜に期限が切れる米国土安全保障省の暫定予算について、期間を1週間延長する法案を賛成多数で可決した。同省が一部閉鎖される事態は土壇場でひとまず回避された。オバマ米大統領が進める移民制度改革を阻止したい共和強硬派の抵抗は根強く、対立の火種はくすぶる。1週間の猶予期間内に事態を収拾できるか予断を許さない状況が続く。
国土安保省は国境警備や空港・港湾検査などを担う。予算延長が実現しなければ、約23万人の職員のうち管理部門の約3万人は自宅待機となり、国境警備など危機管理に関わる業務の担当者は無給での勤務を迫られるところだった。オバマ氏は「米国の経済や安全保障に直接打撃を与える」と共和をけん制していた。
共和はオバマ大統領の移民制度改革に反対し、担当する国土安保省の予算を暫定予算とした。そのうえで2015会計年度(14年10月~15年9月)の予算案に、移民制度改革に関する支出を禁じる条項を盛り込んだ。
共和上院トップのマコネル院内総務は予算案の審議で強硬姿勢を貫き、国土安保省の一部閉鎖に至った場合、同党への批判が高まる事態を懸念。24日には予算案に盛り込まれていた移民制度改革を阻止する条項を切り離し、15会計年度の予算を認める案を提案した。
移民制度改革の議論は別途進める一方、国土安保省の業務は継続できるようにする形で事態を収拾することを目指した。上院民主の同意を得て、27日午前の本会議で可決した。ただ下院では移民制度改革に対する保守派の抵抗が強く、マコネル氏の妥協案ではまとまらなかった。
このため下院共和執行部は暫定予算を3週間延長する案を提示したが、採決では52人の共和議員が反対票を投じ否決された。このため延長期間を1週間に短縮して合意したが、共和は移民制度改革の阻止に向けて引き続き圧力を強めるとみられる。
13年10月にも共和保守派が連邦債務上限の引き上げを拒否し、政府機関が一時閉鎖された。この際には共和の強硬姿勢が政治空転を招いたとして、有権者の支持を失った経緯がある。