駒の検分をする両対局者=石川県小松市、小川智撮影
石川県小松市の「辻のや花乃庄」で19日に始まった第76期将棋名人戦七番勝負の第2局。その対局に使われている駒は佐藤天彦名人(30)が選んだ最上級駒だ。
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タイトル戦では通常、将棋連盟の駒か、地元の愛棋家が所有する駒が使用される。今回は、日本将棋連盟石川県支部連合会理事の塩井一仁さん所有の「水無瀬形(みなせがた)」と呼ばれる駒が選ばれた。
用意された駒は、いずれも塩井さんが所有する3組で、文字を漆で盛り上げた最高級仕様の「盛上駒(もりあげごま)」だ。一組は昭和の天才駒師として名高い故・宮松影水(えいすい)作の巻菱湖(まきのりょうこ)。そして残りの二組は、いずれも平田雅峰(がほう)作の錦旗(きんき)と水無瀬形。塩井さんは「影水は伝説の駒師。名人戦には欠かせない。ただ少し小ぶりで薄い。現代の作家のものとしてポピュラーな水無瀬と錦旗も用意しました。対局者に好きなものを選んでいただければ」と話した。
18日夕方に行われた両対局者による検分では、照明の明るさや将棋盤、記録机の位置などをチェックした後、駒選びが行われた。
1組ずつ佐藤名人が数枚の駒を取り出し、羽生善治竜王とともに盤上に広げ、感触を確かめる。その駒をしまった後、次の駒を並べるといった要領で、3組の駒を慎重に吟味した。
3組とも名人戦で使用するのに申し分のない駒で、過去にタイトル戦で使われたこともある。両対局者が選べないでいると、立会人の中村修九段が「羽生さんは使ったことがあるので、佐藤さんが選んだ方がいいのでは」。これを受けて佐藤名人は「水無瀬は使ったことが少ないんですね。じゃあ水無瀬で」と、水無瀬形を使うことに決まった。
木地は最高級とされる伊豆諸島・御蔵島(みくらじま)産の黄楊(つげ)。模様は、長時間の対局でも目が疲れない、癖のない赤柾(あかまさ)だ。
第1局は横歩取りの戦型からほとんどすべての駒が躍動する華々しい展開になった。今回はどんな展開になるのか。盤上の戦いとともに、美しい駒にも注目だ。(村上耕司)