【ロンドン=黄田和宏】5日の欧州金融市場では、欧州中央銀行(ECB)が9日に始める量的緩和策による国債の買い入れを先取りして、国債利回りの低下が一段と広がった。欧州各国の長期金利は軒並み過去最低水準に下がった。外国為替市場ではユーロが対ドルで11年半ぶりの安値圏に下落した。
ECBが量的緩和策を通じて買い入れるユーロ圏の国債の購入額は、2015年の発行から償還を差し引いた純発行額の約2倍に達し、国債の品薄感は一段と強まる見通しだ。ECBのドラギ総裁が国債買い入れの下限金利がマイナス0.2%と指摘したことも、金利の低下を促した。
債券市場ではスペインやイタリアなどの南欧諸国を中心に長期金利が過去最低水準で推移し、今後数カ月に満期を迎える国債の利回りはゼロ近くまで下がった。
運用難の投資家の資金は、量的緩和策の対象にならないユーロ建ての社債などに向かっている。格付けの高い英蘭石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルなどの社債がマイナス金利で取引され、格付けが投機的階級の高利回り債券も利回りの低下が目立っている。
ECBによる国債買い入れで米欧の金利差が広がるとの見方から、5日の外国為替市場ではユーロ売りが加速した。対ドルでは一時1ユーロ=1.1ドル割れ目前まで下落し、03年9月以来のユーロ安・ドル高水準をつけた。株式市場ではユーロ安を背景にドイツ株が過去最高値を上回り、欧州株が全般に上昇した。