石油輸出国機構(OPEC)のバドリ事務局長は週末、原油価格の下落が米国のシェール産業に与えている劇的な影響について満足げに語った。
設備投資の予算は削減され、掘削装置は稼働しておらず、従業員は解雇されている。米国の石油生産量は目覚ましく増加し、過去3年間に毎年日産100万バレル以上を世界市場に供給してきたが、今年、生産量は横ばいになりそうだ。
米国の原油は供給過剰になっている(ノースダコタ州の油田で)=AP
こうした痛みの多くは市場原理の結果だ。米国の生産量が急増し、世界的需要が急激に減速したことが供給過剰を生み出した。競合者を救済する理由を見いださないサウジアラビアは様子見を決め込み、供給過剰は価格のメカニズムだけにより修正可能だ。
米国の原油生産者をいらだたせているのは、自国政府が制定した規制によって問題が悪化しているという事実だ。1970年代に、精製されていない原油の輸出は特別な場合を除いて禁止されたが、これは当時のOPECの石油禁輸に対抗するために生まれた遺物で、いまや何の役にも立っていない。
この規制は米国消費者の燃料費を下げる効果が全くないことが様々な調査によって確認されている。それどころか、精製業者が法外な使用料を受ける手助けをしている。規制が存続することで、自由貿易を支持する米国に対する国際的な信頼を傷つけてしまう。さらに、原油価格が弱含み米国の生産に脅威を与えている現状では、規制は特に有害だ。
大手産油国のなかで、米国は唯一、国際市場での販売を禁止しており、2つの市場で供給過剰が起こっている。一つは世界の市場で、もう一つは米国内の市場だ。
米国内の原油貯蔵タンクは、1日で全米生産量の約16%に相当する、およそ150万バレルの勢いで満たされている。買い手探しに苦心しているためだ。米国は依然として石油の純輸入国で、シェールオイルから生産される軽質油や低硫黄油は、多くの米国精製業者が好む、輸入された重油やサワーオイルを完璧に代替できない。
結果として、米国内の原油で生産者が受け取る価格と、世界の市場で売ることができた場合に支払われる価格との差が急激に広がっている。米国市場の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は、国際的に取引されているブレント原油に対して、1月には1バレル当たりほぼ同じ水準だったのが、9ドルも下方乖離(かいり)している。