殺害された中学1年の上村遼太君(13)が通っていた川崎市立中学校では、上村君の友達付き合いの異変を察知し、関係機関が集う会議などで報告したものの、踏み込んだ対応はしていなかった。市幹部や学校は「SOSを大人が受け止められなかった」と悔やむ。市は事件を防げなかった対応の問題点を検証中だ。
上村君は小学6年の9月、川崎市に転校した。中学入学当初は休みなく登校していたが、1年の秋からバスケットボール部の練習に出なくなり、今年1月以降は学校に来なくなった。
「上村君が他校の(素行の悪い)生徒と付き合っている」。1月15日、中学の教諭は市内の小中学校の生徒指導担当教諭が情報交換する会議で報告した。さらに中学側は、地域の警察署や児童相談所とともに生徒や家庭の問題を話し合う「学校警察連絡協議会」でも、1月と2月の計2回、「学校に来ない子がいて心配だ」と話題に出した。
しかし、いずれの会議でも報告だけで、実際に動いたのは上村君の担任教諭のみだった。
担任は不登校になった1月8日から2月18日まで連日のように電話し、自宅を5回訪問したが、電話で話せたのは1回。登校を促すと、上村君は「そろそろ学校行こうかな」と漏らした。だが結局、登校はしなかった。
一方、複数の同級生は殴られてあざができた上村君を目撃していた。中には上村君から「学校に行きたいけど、脅されて行けない」「殺されるかもしれない」と打ち明けられた子もいた。〔共同〕