過激派組織「イスラム国」との戦闘が続くイラクの行政官12人がこのほど来日し、東日本大震災から4年となった東北3県の被災地を視察した。原子力発電所事故や津波被害を受けた町の現状を目の当たりにした12人は、震災復興を母国の戦災避難民の支援に生かす考えだ。
12人は同国政府や地方の公務員で、国際協力機構(JICA)の招きで9日から14日までの日程で来日。
津波にのまれ建物の骨組みだけが残る宮城県南三陸町の防災対策庁舎を見学した国内避難民高等委員会長官のダウード・フセインさん(44)は「後世に記憶を伝えるため、建物を残すべきだ」と感想を述べた。
プレハブ店舗で営業する「南三陸さんさん商店街」を訪れた移民・難民省大臣室執務官のハイダル・ジャッファールさん(30)は「政府が小規模な商店を支援する考え方をイラクに持ち帰りたい」と話した。
イスラム国による支配から逃れたイラク国内の避難民は280万人にのぼるとされる。クルド地域政府内務省スレイマニヤ県緊急対策室長のアジーズ・カディルさん(46)は「時間とお金があればプレハブの仮設住宅をつくって住まわせてあげたい」と述べた。
12日に訪れた宮城県南三陸町戸倉地区の仮設住宅では、住民と一緒に「方言ラジオ体操」を踊って交流。仮設に住む佐藤由和さん(66)は「自分の国が大変なときに東北に来てくれてうれしい」と感慨深そうだった。