関西電力は17日午前の臨時取締役会で、運転を始めて42年以上の美浜原子力発電所1、2号機(福井県)の廃炉を正式に決めた。規制基準を満たすには1000億円超の安全投資がかかる。出力が50万キロワット以下と小さく、費用に見合う効果を得られないと判断した。原発専業の日本原子力発電も同日午前に取締役会を開き、敦賀原発1号機(同)の廃炉を決めた。
関西電力美浜原発2号機(手前)と1号機(福井県美浜町)=共同
東日本大震災後に東京電力以外の国内原発の廃炉が決まるのは初めて。関電の八木誠社長は福井県庁を訪れ、廃炉の方針を西川一誠知事に説明した。そのうえで「具体的な廃止措置計画をできるだけ早期に作成したい」と述べた。西川知事は「安全確保が何より重要」と、県と関電が廃炉事業を協議する場を設けることを提案し、八木社長も合意した。
八木社長は会談後、美浜3号機と高浜1、2号機の再稼働を午後に原子力規制委員会へ申請する予定であることを記者団に明らかにした。
日本原電の浜田康男社長も同日午後に福井県庁を訪問し、廃炉の方針を報告する。敦賀1号機は1970年に営業運転を始め、国内の現役原発で最も古い。出力も35万7000キロワットと小規模で効率も良くないため、廃炉を検討していた。
同社は17日午後、他の電力会社の廃炉支援や海外事業を強化する方針を盛り込んだ経営再建策を発表する。原電は保有する全3基の原発が停止し、発電量ゼロの状態が続いている。敦賀1号の廃炉で原発が2基に減るため収益源の確保が課題となっている。
宮沢洋一経済産業相は17日の閣議後記者会見で、電力会社が原発を廃炉した後の地元経済への影響について「随分不安を持たれていることは事実。財政的な制限はあるが、不安のない方策を検討する」と話した。原発の立地自治体は国から交付金を受け取っているが、廃炉が決まれば支給対象外となる。経産相は「まだ若干時間があるので、立地自治体と相談しながら進める」と述べた。
政府は昨秋、運転開始から40年前後の古い原発を廃炉にするかを早期に決めてほしいと電力各社に要請した。対象は美浜1、2号機と高浜1、2号機、敦賀1号機、中国電力の島根1号機(島根県)、九州電力の玄海1号機(佐賀県)の7基。中国電、九州電も18日午前の臨時取締役会で廃炉を決める方針だ。
東日本大震災をきっかけに原発の規制基準が厳しくなり、従来よりも多額の安全投資をしないと再稼働できなくなった。廃炉にしても一度に巨額の損失を計上しなくて済むように政府が会計制度を3月に改めたことも、決断を後押しした。
廃炉後の課題は多い。廃炉にすれば地域経済に大きな影響が出かねない。廃棄物の処分方法も決める必要がある。