東洋ゴム工業(大阪市)の免震装置のゴムが国の性能基準を満たしていなかった問題で、同社の山本卓司社長ら経営陣が昨年7月、部下から装置は国の基準を満たしているとする虚偽の報告を受けていたことが18日、分かった。山本社長が記者会見で明らかにした。同社は不適合の疑いがあると発覚した昨年2月以降も計12棟に不適合装置の納入を続けていた。
北川イッセイ国土交通副大臣は18日、同省内で山本社長と面会し「国民の安全に対する信頼を損ねた。許しがたい行為だ」と批判。不適合装置が使われた計55棟の構造安全性について、来週半ばまでに把握するよう指示した。
会見した山本社長によると、子会社の東洋ゴム化工品(東京都新宿区)で免震装置のゴムに不適合の疑いが発覚したのは昨年2月。子会社の調査を経て同年5~6月ごろ、親会社の東洋ゴム工業に「不適合の疑いがある」との報告があった。
同社は社内調査に乗り出したが、同年7月ごろ、装置は国の性能基準を満たしているとする報告が山本社長ら経営陣に上がったという。しかし、その後の調査で基準を満たしていないことが判明。「試験データが虚偽の可能性が高い」と判断し、最終的に装置の納入をやめたのは今年2月だった。疑いが発覚してからの約1年間で不適合装置は計12棟に納められた。
山本社長は「国の基準の範囲内だったとの報告があり、不適合と知らずに納入を続けた。結果として関係者に多大な迷惑をかけた」と謝罪。不適合装置が使われた計55棟については、安全性を調査したうえで原則全てを交換するとしている。