日銀は26日「わが国の輸出を取り巻く環境変化:世界貿易量と輸出シェアからのアプローチ」と題する論文を発表した。円安にも関わらず、輸出が事前の想定を下回り続けた理由について、世界貿易の停滞や海外への生産移管などリーマン・ショック後の経済構造の変化が要因だと指摘した。
2012年末からの円安局面を分析した場合、海外経済の成長率と為替レートの要因で説明する基本的な経済モデルでは、輸出ははっきりと増加すると予想されていた。しかし実際の輸出の伸びはモデルによる推計値を一貫して下回った。
世界的な貿易活動については、世界経済の成長率と比較した貿易の伸びが、リーマン・ショック後は大幅に鈍化した。金融危機の後遺症により耐久消費財や資本財への需要が停滞していることなどが影響しているという。
日本の輸出シェアの面では、特に情報関連分野が円高局面で価格競争力を失ったことに加え、アジア各国の技術力の向上で非価格面でも競争力が低下したことが影響した。また円高時に自動車産業などが現地生産の拡大を進め、2013年ごろから集中的に海外拠点が立ち上がったことも輸出が増えにくい理由と分析した。
今後の輸出の動向については、ペースは緩やかなものの世界経済の成長に合わせて貿易が伸びると予想した。海外生産の流れは続くものの、円安の影響で生産移管の動きは鈍化しており、生産体制の動向によって輸出の伸びは左右されるとした。〔日経QUICKニュース(NQN)〕