九州電力の域外電力供給が本格的に動き出す。27日、出光興産と東京ガスと共同で首都圏に出力最大200万キロワットの石炭火力発電所を建設すると正式発表した。2016年に予定される電力小売りの全面自由化をにらみ、首都圏市場進出の足がかりを築く。記者会見した瓜生道明社長は「九州だけでなく域外供給も通じて収益基盤を強化したい」と強調した。
5月に3社が均等に出資して、特別目的会社(SPC)の「千葉袖ケ浦パワー」(仮称、千葉県袖ケ浦市)を設立し、建設に向けた検討を進める。取締役は3社から派遣する。
同市にある出光興産の遊休地を活用。最大で出力100万キロワットの石炭火力発電設備を2基建てる計画だ。20年前後から4~5年程度かけて建設し、20年代半ばの運転開始を目指す。この規模の投資額は国の目安では4600億円程度かかる。瓜生社長は、松浦発電所2号機(長崎県松浦市)の応札時のコストダウンのノウハウを生かして「もっと低く抑えたい」と語った。
九電は出資に応じて分け合う電力を首都圏で企業や家庭に小売りする想定。九電本体で手掛けるか、販売会社を設立するかは今後検討する。瓜生社長は「東ガスの1000万件の顧客は非常に強み」と述べ、自社単独だけでなく、ガスとのセット販売も視野に入れる。
電力小売りの全面自由化を前に東京電力がヤマダ電機の関西と中部地方の店舗に電力を供給するなど、電力会社の相互参入が相次いでいる。九州域内でも既に九電から顧客が流出しており、自由化後の流出加速は必至。需要の伸びが期待できる首都圏で顧客基盤を確保することが競争を生き抜く上で重要となる。