「百年の孤独」か、それとも「コレラの時代の愛」か――。突き詰めれば、これが米州首脳会議であらわになった2つの世界観だった。同会議での米国とキューバの関係改善がこの対立を浮き彫りにした。
一つ目の見方は歴史に目が向いている――中南米文学を代表するコロンビアの作家、ガブリエル・ガルシア・マルケスの代表作の神話的な世界だ。観念的な表現に満ちた原始的な世界ともいえる。
握手するオバマ米大統領(右)とキューバのカストロ国家評議会議長(11日、パナマ市)=ロイター
この見方を示したのはベネズエラのマドゥロ大統領だ。人権侵害に関与した同国の当局者7人に制裁措置を発動したとして、同氏は米国を強く非難。「米国が中南米に干渉する事態が2度とあってはならない」と訴え、「100年に及ぶ苦難と新自由主義」を責め立てた。米国の参加に抗議の意を表して会議を欠席しようとしたエクアドルのコレア左派大統領もこの考え方の持ち主のようだった。
これに対し、もう一つの見方は怒りに満ちた過去に終止符を打とうとするものだ。中南米最古の反政府活動を終結させるため、マルクス主義のゲリラと和平協議を2年間続けているコロンビアのサントス大統領はこの考えを持っている。「中南米地域は過去にとらわれがちだ」と同氏は述べている。
半世紀に及ぶ冷戦の対立からの脱却を目指すキューバのカストロ国家評議会議長とオバマ米大統領も同じ意見だ。オバマ氏は「私が生まれる前に始まった戦いを続けることに」関心はなく、「未来に目を向けている」と強調した。
カストロ氏もこれに続いた。80代の同氏は過去の憤りについて延々と訴えた後、オバマ氏は誠実な人物で、米政府の対キューバ禁輸措置へ責任はないと述べ、先の感情的な発言について謝罪した。もちろん、過去に触れたかと思えば未来にも言及するこうした語り口は、おおむね利己的な政治的パフォーマンスにすぎない。
オバマ氏が禁輸措置を解除する方針を掲げているのは、中南米で最も難しく、長期に及ぶ懸案の一つを取り除きたいからだ。イランとの協議に比べればはるかに異論が少ないのも一因だ。同様に、カストロ氏もキューバ経済を活性化させるため、全面的な緊張緩和に伴う海外投資を必要としている。ベネズエラの経済危機の悪化で同国政府からキューバ政府への金融支援が脅かされている現状では、これはとりわけ重要だ。