【ラスベガス=兼松雄一郎】米娯楽大手のMGMリゾーツ・インターナショナルは4日、松竹と組み、今年8月と来年5月に米ラスベガスで歌舞伎を翻案したショーを上演すると発表した。ラスベガスでの歌舞伎ショー上演は初めて。新たな演目として歌舞伎に着目したMGMが持ちかけ、東京五輪に向け訪日客獲得を目指す松竹が応じた。
MGMグループが運営する「ベラージオホテル」の噴水ショーと、主人公と鯉(コイ)の精が格闘する演目「鯉つかみ」を融合する。歌舞伎を知らない層に受け入れられるようMGMと松竹の演出家が協力する。主演は人気歌舞伎俳優の市川染五郎氏。CG(コンピューターグラフィックス)などを投映する「プロジェクションマッピング」技術を使い、大道具などのコストを抑える。
知名度向上のため今年は無料で公開する。来年の上演時には、現地の映画館で歌舞伎の名場面を集めた映像を有料で上映する。米国進出を目指すアパレルや飲食店などにもイベントへの参加を呼びかける。
MGMのジェームス・ムーレン最高経営責任者(CEO)は会見で「短期の利益は期待していない。松竹と長期の関係を築き日米の懸け橋となりたい」と述べた。市川氏は「歌舞伎に定義はない」と話し、伝統的な歌舞伎の枠を超えた演目への挑戦に意欲を示した。
松竹は1960年代以降、主に「日本通」を対象に歌舞伎の海外興行を手がけてきた。ただ、セリフの一部を英語にすることはあったが、海外公演向けの改変は小幅にとどまっていた。