【ベルリン=赤川省吾】世界最高峰のオーケストラであるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団は11日、次期首席指揮者の決定を先送りしたと発表した。現任のサイモン・ラトル氏が2018年で退任するため、その後任を選ぶ会合を16年ぶりに開いた。だがオケ団員の意見が割れ、「結論が出なかった」(同オケの広報担当者)という。
ベルリン・フィルは楽団を率いる首席指揮者をオケ団員の投票で決める。同日午後、ベルリン市郊外で123人が出席して開かれた会議は日没まで続いたものの、意見がまとまらなかった。オケの代表者は独メディアに「1年以内に会合をやり直す」と語った。
下馬評には何人かの名前が挙がったものの、どの指揮者も一長一短で決め手を欠いた。
例えばドイツ系のスター指揮者、クリスティアン・ティーレマン氏はシュトラウスなどドイツ音楽の解釈では定評がある。だが得意曲(レパートリー)が少なく、組織運営では独断専行ばかりが目立つ。最近では移民排斥を掲げる旧東独の政治団体に理解を示し、波紋を広げた。
対抗馬だったラトビア出身の若手指揮者、アンドリス・ネルソンス氏は対照的に温和な人柄。現代音楽まで振れる音楽性の幅の広さもある。だが解釈に深みが足りないと批評されることが多い。
ベルリン・フィルの首席指揮者はオケの音色や演奏水準に大きな影響を与えるだけでなく、クラシック音楽界の方向性を決定づける重要ポスト。それだけに世界の若手指揮者の成長を見極めつつ、だれにバトンを渡すのかゆっくり検討する。