【ニューヨーク=清水石珠実】ソフトバンク傘下の米携帯3位スプリントが契約件数で4位TモバイルUSに肉薄されている。3月末時点の契約件数は5710万件で、Tモバイル(5680万件)との差は30万件に縮まった。スプリントは販売網の強化策を打ち出すなど、反転攻勢の基盤づくりを急ぐ。
スプリントが5日発表した2015年1~3月期決算で、契約の純増減数(プリペイドは除く)は17万件の純増(前年同期は33万3千件の純減)だった。流出には歯止めがかかったが、Tモバイルが背後に迫っている。
Tモバイルは積極値引きでベライゾン・コミュニケーションズとAT&Tの「2強」から利用者を奪っている。途中解約に多額の解約金を課す「2年縛り」をやめ、他社からの乗り換え希望者の費用を肩代わりするサービスも提供している。
一方、スプリントでは14年8月にソフトバンクの孫正義社長の肝煎りで就任したマルセロ・クラウレ最高経営責任者(CEO)がテコ入れに取り組んでいる。Tモバイルよりも安価な使い放題プランを導入し、通信網の強化で「つながりやすさ」も改善しつつある。
4月上旬には経営破綻した家電量販店ラジオシャックの1435店舗をスプリントの携帯電話も扱う「共同ブランド店」に衣替えした。ただ、こうした改善策はコスト増につながり、15年1~3月期の最終損益は2億2400万ドル(約270億円)の赤字(前年同期は1億5100万ドルの赤字)と赤字幅が拡大した。
スプリントは契約件数が本格的な増加基調に転じ、収益改善につながるか正念場を迎えている。業績を回復できるかどうかは、ソフトバンクのグループ全体の成長戦略にも大きく影響する。