【ワシントン=川合智之】米内務省は11日、石油大手の英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルに対し、北極海で石油や天然ガスを今夏掘削することを条件付きで承認した。米メディアが報じた。北極海は莫大な石油と天然ガスが眠るとされる「最後のフロンティア」と呼ばれるが、事故などで開発計画は遅れていた。
同省は環境影響評価などを条件に、シェル子会社に対し、アラスカ西海岸沖のチュクチ海の6カ所で今夏に掘削を開始することを認めた。シェルは同地域での掘削事業に過去8年間で60億ドル(約7200億円)を投じており、今年は10億ドルを追加投資する計画という。
同プロジェクトには地元住民や環境保護団体などの根強い反対があるほか、2010年に発生した英BPのメキシコ湾原油流出事故の影響などで計画が遅れた。12年末には掘削船が座礁し、13年の掘削活動を断念した。
北極圏には世界の原油埋蔵量の約2割が眠るとされる。米の試算によると、チュクチ海などの米領海内には原油220億バレルと天然ガス93兆立方フィートが埋蔵されているという。ただ、掘削可能な期間は氷が解ける7~10月と短く、強風や高波のために掘削は技術的に難しいとされる。ホッキョククジラやセイウチなどの海洋生物の生息域としても知られ、掘削計画はなお難航も予想される。
北極海の資源開発では、ウクライナ危機を受けたロシア経済制裁の余波で、各社の計画中断が目立つ。米エクソンモービルが石油大手のロシア国営ロスネフチとの北極海大陸棚の共同探査を中断。シェルも西シベリアで石油大手ガスプロムネフチとのシェールオイルの共同開発を停止した。