競馬の外れ馬券代を経費と認めなかった課税処分を不服として、北海道の40歳代の公務員男性が国に所得税約1億9400万円の取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁(増田稔裁判長)は14日、男性の請求を棄却した。「競馬愛好家の馬券購入方法と大差はなく、営利目的行為に当たらない」と判断した。男性側は控訴する方針。
最高裁は3月、競馬の払戻金を申告せず所得税法違反罪に問われた大阪の男性の上告審判決で、コンピューターの独自ソフトでの馬券購入は「営利目的の継続的行為といえ、外れ馬券代も経費に当たる」との初判断を示した。同じ馬券の大量購入でも、購入方法によって判断が分かれた。
判決によると、北海道の男性は2005~10年に計72億7千万円の馬券を買い、計78億4千万円の払戻金を得た。払戻金は「雑所得」にあたるとして、外れ馬券代も経費として申告した。
これに対し、税務当局は国税庁通達に基づき、男性の払戻金の収入は「一時所得」にあたり、当たり馬券の購入費しか経費算入できないと判断し、追徴課税した。男性はこれを不服として提訴した。
増田裁判長は判決理由で、男性の馬券購入方法について「レースごとに自分で予想して購入額を決めており、機械的とはいえない」と指摘。競馬のもうけは「個別の馬券的中による偶発的な利益の集積にすぎず、一体の経済活動とまでは認められない」として一時所得に当たると結論付けた。
大阪の男性の馬券収入を雑所得に当たるとした最高裁判決との違いについて「馬券の購入履歴などが保存されていないため、最高裁判決の当事者のように機械的、網羅的に購入していたとまでは認められない」とした。
原告側の代理人弁護士の話 レースごとの購入資料がないという理由で雑所得と認めないのは納税者にあまりに酷だ。最高裁判決の趣旨をないがしろにする不当な判決だ。
札幌国税局の話 妥当な判決と考えている。