日本学術会議の検討委員会は3日、受精卵や生殖細胞(精子、卵子)に対するゲノム編集の臨床応用は、現状では認めるべきではないとする報告書の素案を公表した。今春のとりまとめに向け詳細を詰める。
受精卵や生殖細胞のゲノム編集技術をめぐっては、米科学アカデミーが先月、数世代にわたる影響の評価や市民との対話など厳しい条件を前提に、遺伝性疾患の予防に限って、将来的な臨床応用を認める報告書を発表した。
学術会議の素案では、「遺伝性疾患の発症予防を目的とする特定のケースで使うことは考えられる」としながらも、日本は海外に比べて不妊治療が盛んな割に、生殖医療に関する規制や議論が不十分な現状を指摘し、「ゲノム編集を用いる生殖医療は実施すべきではない」とした。生殖細胞の遺伝子異常を修復するような不妊治療目的での臨床応用については「正当化困難」とした。
受精卵や生殖細胞のゲノム編集をめぐっては、政府の生命倫理専門調査会が昨年、子宮に戻さない基礎研究に限っては容認する報告書をまとめた。ただ、国による指針作成は見送る方針を示している。こうした状況を踏まえ、学術会議の検討委員会では国の指針や法的規制をあらためて求める声も出た。(竹石涼子)