【ワシントン=矢沢俊樹】米議会上院は14日、環太平洋経済連携協定(TPP)妥結に欠かせない大統領貿易促進権限(TPA)法案の審議を始めるのに必要な動議を賛成多数で可決した。ひとまず上院で週明けから本格的な審議が始まる運びになった。
上院は12日のTPA法案の審議入り採決で賛成票が足りず、いったん否決していた。13日に与野党の話し合いで一転して審議入りで合意し、14日に改めて採決して、動議を可決した。上院本会議の最終投票に向けて一歩前進した。ただ、下院での成立の見込みは依然として厳しいとの見方も強い。TPA法案の先行きは不透明な要素が多い。
14日の採決で通ったのは上院で法案を審議するのに必要な「上程動議」だ。採決結果は反対33人、棄権2人に対し、賛成が65人にのぼった。12日の1回目の審議入り採決では賛成が52人で、可決に必要な60人(上院定数100人)に満たなかった。14日の再採決では12日に1人しかいなかった与党・民主党の賛成者が一気に13人に膨らんだ。
4月22日の上院委員会採決の段階で賛成していた民主議員の大部分が14日の審議入り採決でも賛成票を投じた。さらにほかの7人の民主上院議員も賛成に回り、賛成を65人に押し上げた。
12日に実施した一度目の採決が不調に終わったことで、共和執行部のマコネル上院院内総務らは民主党の慎重派が求める審議入りの条件をのんだほか、労働者に税金で所得を補償する貿易調整支援(TAA)に柔軟な姿勢を示すなど仕切り直しに奔走した。共和が民主側に柔軟な姿勢を示したことが14日の採決で支持を広げるのに奏功した。
14日の審議入り採決で規定数の60人の壁を超えたことで、週明けから本格化する上院の審議と修正協議にも弾みがつく見通しだ。ただ、下院は共和からもTPA法案への造反が増える見込み。審議入りも上院に比べて時間がかかる見通しだ。