日銀の黒田東彦総裁は15日、都内で開かれた読売国際経済懇話会で「『量的・質的金融緩和』の2年」と題して講演した。
黒田総裁は量的・質的金融緩和の効果について、予想物価上昇率から名目金利を差し引いた実質金利が「1%程度低下した」と述べた。その上で、同様の政策効果を伝統的な利下げ政策で実施しようとした場合は2%の利下げが必要になるとの分析を紹介。「伝統的な金利政策が0.25%ずつ行われることを踏まえると、量的・質的金融緩和は10回近くの利下げを同時に行ったのと同等の政策効果を持っている」と述べた。
日銀は4月30日に発表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で、物価目標2%の達成時期を従来の「2015年度を中心とする期間」から「16年度前半」に後ずれさせた。展望リポートと、従来の2年程度で物価目標を実現するとの約束(コミットメント)との関係について、黒田総裁は「実際の物価が目標から乖離(かいり)する期間が生じることは、各国の中央銀行でも当然のこととされている」と主張。「物価の基調は着実に改善しており、こうした動きは『2年程度でできるだけ早期に』とのコミットメントに沿った動きとなっている」と話した。
景気の先行きについては、経済の前向きな循環メカニズムが働いていることに加えて原油安の後押しもあるとして「回復基調が持続する」との見通しを述べた。そのうえで「物価の基調が変化し、(物価)2%の実現に必要となればちゅうちょなく調整を行う」とした。〔日経QUICKニュース(NQN)〕