【テヘラン=久門武史】富士フイルム、島津製作所など医療機器を手掛ける日本企業10社が17日、イランに医療機器を売り込む説明会を首都テヘランで開いた。主催した日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、核開発問題で経済制裁を受けているイランに日本が企業団を派遣するのは初めて。核協議の進展と制裁解除をにらみ、イラン市場を開拓する動きが本格化している。
イラン政府側は説明会で、医療機器の輸入規模は8億ドル(約960億円)相当だと表明。同国ではがんや心疾患が増え、早期発見・治療のニーズが強いとされる。制裁解除で、日本企業に強みのある超音波診断装置や内視鏡などの取引が膨らむ可能性がある。説明会にはオリンパスやパラマウントベッド、サクラ精機(長野県千曲市)なども参加した。
現状でも医療機器は制裁の例外としてイランに輸出できる。しかし銀行取引への制裁のため、輸出企業は代金決済に苦慮。邦銀大手は制裁対象外の人道分野の貿易に限りイランと決済するための口座を開いているが、利用する企業からは「使い勝手が悪い」との声も漏れる。厳格な制裁を維持したい米国に配慮し、金融機関がイランとの取引拡大に慎重になっているとの見方がある。
イランは人口約7800万人と中東屈指の市場で、原油と天然ガスの埋蔵量も豊富だ。核問題で米欧が科している銀行取引や原油輸出への制裁が解ければ、資金決済が容易になり購買力も増す。既にフランスなど欧州諸国は制裁解除に先立って企業団をイランに送り、販路開拓で先手を打とうとしている。
米欧など6カ国とイランは核問題の包括解決を目指し、6月末の最終合意を目標に協議を重ねている。4月にはイランが核開発を大幅に制限し、見返りに米欧が制裁を解く枠組みで合意している。