政府は21日、韓国が一部の日本産の水産物を不当に輸入制限しているとして、世界貿易機関(WTO)への提訴に関する手続きに入ったと発表した。日本が韓国に対して同様の手続きに入るのは初めて。韓国は福島第1原子力発電所による放射線の影響などを理由に、福島をはじめ8県の全水産物の輸入を禁止しているが、日本は科学的根拠がないと主張している。
同日、WTO協定に違反しているとして、WTOを通じた2国間協議を韓国側に要請した。要請から60日以内に解決できない場合、第三国の法律家や科学者などでつくる紛争処理小委員会(パネル)の設置を求める。
韓国は2011年の原発事故を受け、8県でとれるウナギやスズキなど一部の水産物の輸入を禁止。13年9月からは全ての水産物に対象を広げ、放射線量の検査も厳しくした。日本は外交ルートを通じて撤回を求め、韓国も専門家を日本に派遣し現地調査を実施してきたが「規制緩和に向けためどが全く立たない」と判断した。
農林水産物の貿易をめぐっては15日、台湾が日本産の全ての食品に産地証明書の添付を義務付けるなど、輸入規制を強化している。中国やシンガポールなどでも依然として一部で規制が残っている。提訴を通じて、他国をけん制する狙いもあるとみられる。