政府は22日、原子力発電所の使用済み核燃料を再処理した後に出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分について、新たな基本方針を閣議決定した。地下深くに埋める最終処分場選びについて、電力業界が主体となって公募する方式を改め、国の主導で進める。最終処分した後も取り出せるようにする。基本方針の改定は7年ぶりで、従来の政策を抜本的に見直す。
基本方針の改定は東京電力福島第1原発事故後は初めて。国内には使用済み燃料が約1万7000トンあり、原発が再稼働すると増える。国が前面に出る姿勢を明確に示すことで、難航する核のごみ問題の進展を目指す。
菅義偉官房長官は同日、首相官邸で開いた関係閣僚会議で「問題を先送りせず、国民の理解を得ながら一歩ずつ前へ進めていく」と述べた。
核のごみは使用済み核燃料を再処理してウランやプルトニウムを取り除いた後に出る。強い放射線を長期間出し続けるため、政府は地下300メートルより深くに埋めて隔離する方針だ。政府は関連法を2000年に施行したが、建設地は決まらず、処分は進んでいない。
これまで処分場探しは電力会社などが設立した認可法人が自治体の立候補を待つ形で進めてきた。07年に高知県東洋町が手を挙げたが、住民の反対などで取り下げた。
新たな基本方針では、地層が安定しているかなどを科学的に分析して政府が処分に適した地域を示す。宮沢洋一経済産業相は「有望地になる自治体は相当数になる」との見通しを示した。その後、候補地の自治体に対して処分場建設に向けた調査を申し入れる。幅広い立場の地域住民と「対話の場」を設け、自治体での合意形成を促す。
処分地を決めた後でも、将来的な見直しの余地を残す。重大な問題が見つかった場合などに作業を止めて再検討したり、核のごみを埋めた後も取り出したりできるようにする。技術の進展などに応じて、今とは違う処分法を選べるようにすることも明記した。
福島第1原発事故に伴う除染で出た汚染土についても、福島県で中間貯蔵施設の整備が始まったが、最終処分場のメドはたっていない。