日本と韓国は23日、財務相が経済・金融を話し合う財務対話と、通商担当相の会合を相次いで開いた。ともに2年以上ぶりの開催で、領土問題などで冷え込んだ両国関係の一段の悪化を食い止め、経済を糸口に正常化を地ならししたい双方の姿勢を印象づけた。日韓の対話を促す米国の意向に加え、力を増す中国を日韓の結束でけん制したい思惑も見え隠れする。ただ日本が韓国を世界貿易機関(WTO)へ提訴するなど新たな火種もくすぶっている。
「大局的な見地から経済交流が幅広く行われる重要性で双方が一致している」。麻生太郎財務・金融相は、韓国の崔炅煥(チェ・ギョンファン)企画財政相を都内に迎えた2年半ぶりの財務対話の後、胸を張った。
対話は22日の夕食会に始まり、アジア地域の金融情勢や東南アジア諸国連合(ASEAN)との金融協力などについて幅広く協議。成果を23日、共同文書として発表した。「会談は非常に和やかなムードだった」と日本の財務省幹部はいう。
ただ両国がA4判3枚の文書にまとめた確認事項は、世界経済の点検や過去の合意の確認が並んだ。財務省の研究所に韓国から人材を招く交流人事などは目を引いたが、2月に打ち切った通貨協定には言及もなかった。何かを決めるというより、会談の開催じたいが目的だったともいえる。
3月の日韓外相会談を手始めに、23日の財務対話と通商担当相のダブル会談、そして5月末の防衛相と立て続けに閣僚が顔を合わせる。財務対話に臨んだ崔氏は「いろいろ事情があって開催できなかったが、今年は日韓国交正常化50周年だ」と強調した。日韓関係の改善を促す米国の要請も歩み寄りを後押しした。
日本側には6月6日の中国との財務対話に向けて、韓国と呼吸を合わせる狙いもある。安倍晋三首相は21日、アジアでの質の高いインフラ整備に5年で約1100億ドル(約13兆2000億円)を投じる構想を表明。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)を意識した動きだ。23日の日韓財務対話でも日本側が改めて構想を説明し、韓国の賛意を得た。
ともに実利の期待できる経済・金融を糸口に、一段の関係悪化に何とか歯止めをかけ、可能なら関係の改善を探りたい日韓。しかし両国間の空気は微妙で、関係改善は一筋縄にいきそうにない。
日本政府は21日、韓国が一部の日本産の水産物を不当に輸入制限しているとして、WTOに提訴する手続きに入ったと発表した。日本が韓国を提訴する初のケースで、韓国側は反発している。「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録を巡っても韓国が異論を唱え、両国政府が協議中だ。
歴史問題などで世論がぶつかる両国関係は、経済面を含む細かな行き違いですら、政治的な摩擦に発展しかねない危うさをなおもはらんでいる。