インド自動車部品大手のアムテック・オートは、中堅自動車部品メーカー、旭テック(静岡県菊川市)の鉄アルミニウム製造部門を買収した。買収金額は明らかにしていない。日系自動車メーカーと取引がある旭テックを通じて、日本や東南アジアでのビジネスを拡大する。インド企業による国内自動車関連メーカーの買収は珍しく、円安で新興国の資金が日本にも流れ始めた格好だ。
このほど株式の譲渡を終えた。旭テックが手掛ける鉄、アルミの鋳造・鍛造部門のほか、機械加工部門を買いとった。各部門を合わせた売上高は3億7500万ドル(約464億円)。主にエンジンに使う部品で、買収によりアムテックは三菱ふそうや日野自動車、コマツなど日系大手との取引を増やすことが可能になる。
旭テックの経営陣はこれまで通り会社に残る方向で、国内に3カ所、タイに2カ所、中国に1カ所ある工場の運営も現状のままとする。一方で、アムテックがインドや欧米など11カ国に持つ生産拠点を生かし、素材部品のグローバルでの共同調達も検討する。買収によりアムテックの連結売上高は35億ドル(約4330億円)超に膨らむ見通しだ。
アムテックは1985年にインド、ニューデリーに設立。旭テックと同様に鍛造や鉄、アルミニウム鋳造部品などに強みを持つ。近年は買収などを通じてグローバルで事業を拡大しており、スズキのインド子会社のほか米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)などとも取引がある。
日本の部品メーカーによる新興国進出は増えているが、インドメーカーによる日本企業の買収はまだ件数が少ない。アムテックは「2020年のオリンピックをにらむと日本は自動車や建機の需要が膨らむ」(幹部)とみている。また旭テックの高い鋳造技術を取り込むことで自社の技術レベルを上げたい考えだ。