東京電力福島第1原子力発電所事故で全町民約7400人に避難指示が出ている福島県楢葉町について、国の原子力災害対策本部は17日、同町で開かれた町議会で、8月をめどに避難指示を解除したいとの意向を示した。解除されれば全町避難の自治体では初めて。町議側からは「解除は急すぎる」などと反発する声が上がった。
現地対策本部長の高木陽介経済産業副大臣は「帰還希望者が(8月の)お盆前にはふるさとでの生活を取り戻せるよう、避難指示解除の手続きを進めたい」と説明した。
避難指示解除は放射線量の状況や生活インフラの復旧状況を踏まえ、地元自治体の合意を得て決めることになっている。町議側から「お盆前の解除は急であり、(実施中の)準備宿泊を継続すべきだ」などの意見が相次いだ。
同町はほぼ全域が比較的放射線量が低い「避難指示解除準備区域」で、4月6日から7月5日までの3カ月間、帰還に向けた準備宿泊が始まっている。同町の住民は2704世帯7401人(6月1日時点)だが、6月15日までに準備宿泊を申し込んだのは323世帯681人で人数は1割以下にとどまる。
国側は7月5日までとしている準備宿泊は避難指示解除まで継続する方針も示した。
準備宿泊は避難指示を解除するための前段階の制度。昨年4月に解除された田村市都路地区、同10月に解除された川内村東部では準備宿泊(3カ月間)をそれぞれ5カ月、2カ月間延長したうえで解除となった。
楢葉町の準備宿泊の開始後、国は県内や東京で住民懇談会を開き、帰還に向けた課題などを聞き取ってきた。今月19日から再び住民懇談会を開催する。