理化学研究所脳科学総合研究センターの利根川進センター長らは17日、脳の記憶を操作してうつ症状を改善する実験にマウスで成功したと発表した。うつ症状になると楽しい記憶を思い出すのが難しくなるとされており、脳の神経細胞を光で刺激し、強制的に記憶を呼び覚ましたところ、症状がやわらいだという。電極や薬剤で神経細胞を刺激する新たな治療法の開発につなげる。
成果は英科学誌ネイチャーに18日、掲載される。
研究チームは遺伝子を組み換えた特殊なマウスのオスを実験に使った。光に反応するたんぱく質が脳の神経細胞の中にあり、光を当てると神経細胞が活性化して記憶を呼び起こせる。
このオスをメスと遊ばせて楽しい記憶をつくった。ストレスをかけてうつ症状を示すようになった後、光を照射して記憶をよみがえらせた。
うつ症状のマウスは尾をつかんで持ち上げてもすぐに抵抗をあきらめていた。楽しい記憶を引き出した後は、健康なマウスと同じくらい元気に暴れ、うつ症状が改善したと結論づけた。光の刺激を定期的に5日間続けると、少なくとも直後の2日間は光の刺激がなくても、うつ症状がおさまった。