動画共有サイト・bilibili(ビリビリ)は12月1日、画面上にリアルタイムコメントを表示する機能「弾幕」の2020年ランキングを発表し、「爺青回(オレの青春カムバック)」が1位に輝いた。今年、ビリビリのユーザーが入力した弾幕は計22億回で、うち、「爺青回」が542万359回を占めた。トップ5には以下、新型コロナの感染が深刻だった湖北省武漢市を応援する「武漢加油(武漢がんばれ)」、見る者に何か別の人や物を思い起こさせる時などに使用する「有内味了(そう、あの感じ!)」、好きな人や物の絡みを目にした時の喜ばしい気持ちを表現する「双厨狂喜(推しの共演に狂喜)」、むやみやたらに同じ内容やネタばかりを何度も繰り返すことをロシアのマトリョーシカ人形(中国語は「套娃」)に例えた「禁止套娃(反復ネタ禁止)」が続いた。人民網が各社の報道をまとめて報じた。
青春時代の思い出がよみがえるうれしさ表現する「爺青回(オレの青春カムバック)」
「爺青回」は中国語の「爺的青春又回来了(オレの青春カムバック)」を省略して作られた言葉。すでに変わってしまった環境で、懐かしい人や物事に遭遇した時に、自然と沸き起こるうれしい気持ちを表す時に使う。「爺青回」は、青春時代によく見た人や映画、ドラマ、ゲーム、アニメが、斬新なスタイルでカムバックしたり、再現されたりした時によく使われる。
ビリビリでは、様々な年齢層の、色々な趣味を持つユーザーが、異なるシーンで「爺青回」を感じているようだ。
「爺青回」と弾幕に入力したアニメファンとは、90年代に大ヒットした「スラムダンク」を見た人かもしれず、2006年に放送された「喜羊羊和灰太狼(シーヤンヤンとホイタイラン)」シリーズを見た人かもしれない。また、「爺青回」と入力したドラマ・映画ファンは、四大名著をドラマ化した作品を見た人かもしれず、「ゴッドファーザー」や「ハリーポッター」、「ロード・オブ・ザ・リング」などの名作映画を見た人かもしれないといった具合だ。
「爺青回」を感じさせているのは、一つには青春時代の思い出をよみがえらせる様々な懐かしのアニメやドラマ、映画、ゲームなど。そしてもう一つは、往年の名作ドラマの名シーンや代表的なキャラクターたちをユニークにコラボさせて作り上げた二次創作だ。これらの名作ドラマや映画を全く新しいスタイルで、若い世代のユーザーたちに見せているだけでなく、こうした懐かしいコンテンツを新しいスタイルで見る作品がトレンドになることで、多くの人が名作をめぐる青春時代の思い出をよみがえらせるきっかけとなっている。
2017年から2019年度までのビリビリにおける「今年の弾幕」とは?
2017年:「囍(ダブルハピネス)」
社会科学院語言研究所・文学所の学者と共同で、ビリビリが通年の弾幕の状況を振り返り始めたのは2017年から。初年度である同年は、「囍(ダブルハピネス)」が「今年の弾幕」に選ばれた。
同年の弾幕評価・審査チームメンバーの1人で、中国社会科学院語言研究所の二級研究員、辞書編纂研究センターの副センター長である儲澤祥氏は、早くから「弾幕」という言葉に注目しており、「囍」が「今年の弾幕」に選ばれたことについて、「現代の若者、特にビリビリのユーザーは、『囍』に新たな意味合いを加えた。『囍』には、『めでたいことが重なる』という古くからの意味があるが、若者はそれをベースにしながら、『重なることがめでたい』という意味を新たに加えた」と分析した。
そして、「若者が『囍』に新しい意味を加えていることは、3つの側面を反映している。1つは具体的な喜びを抽象化させた点。『喜』という漢字自体、にっこり笑ってうれしい気持ちを表している。そこから『囍』はうれしい気持ちを抽象化し、顔では笑わずに、心の底にある喜びを表現したい時に使われている。2つ目は、中国ではこれまで結婚する時に限り、『囍』が使われてきたが、その制限を打破し、『囍』の意義を拡大化させた点。つまり、両想いの恋は喜ばしいことであり、誰かとめぐり合うこともまた喜ばしいので、こうした場合にも『囍』が使われるようになった。3つ目は、めぐり会う相手やカップルの相手を異性間に限る制限を打破した点。誰とめぐり会っても、誰とカップルになったとしても、心の奥底には楽しい気持ちが湧き上がるからだ」と解説した。
2018年:「真実(リアル)」
2018年に中国社会科学院年度弾幕委員会が「今年の弾幕」として「真実(リアル)」を推薦した際に、「『真実』には、現実、認識、気持ちという3つの面とマッチしているという意味がある。つまり気持ち的に、そして意味的に、『真実』だと感じられることを表している。こうしたリアルさは、アート的なリアルさであり、客観的に見て真実味があるかどうかとは無関係」と解説している。
儲氏は、「若者は自分の主観的な気持ちを非常に重視しており、自分の感情を惜しみなく他の人に伝えている。多くの作品は、内容こそ誇張されている部分があっても、自分の想像にフィットし、想定内であれば、弾幕で『真実』を使って、自分がその内容に同意または賛同していることを表現することができる」とした。
2019年:「AWSL(あ、オレ死んだ)」
2019年に「今年の弾幕」に選ばれたのは、「あ、オレ死んだ」という意味の中国語「啊、我死了(A、Wo si le)」のピンイン(中国語のローマ字式発音表記)を頭文字に省略した「AWSL」。これは若者たちの尽きることなき想像力で編み出された略語だ。そして若者たちは、「びっくり」や「エキサイティング」、「ハッピー」といった様々な気持ちを激しく感じた際に「AWSL」を使用している。
では、どんな動画コンテンツの弾幕に多くの「AWSL」が入力されたのだろうか?例えば、生活感漂うグルメドキュメンタリー「人生一串」に、見たら思わずよだれが出そうになる「肉の串焼き」が登場した時。特に深夜にこの飯テロにやられた多くのネットユーザーが「AWSL」を入力した。また、子供の頃よく見た魔法少女アニメ「巴啦啦小魔仙」に対し、「30歳になってしまった」と感じている90後(1990年代生まれ)が、たくさんの「AWSL」を入力している。さらには、かわいいパンダに萌え死んだ時も「AWSL」、一度見たら忘れられなくなる魔性のダンスにやられた時も「AWSL」を使い、その気持ちを表現できる。
オンラインゲーム用語から使用されるようになった「血槽已空(体力ポイントゼロ)」と比べて、「AWSL」は、ゲーム文化の背景を知る必要もなく使うことができ、よりシンプルで入力しやすい。そのため、より多くのネットユーザーが使い、最終的にはジャンルの枠を超えて使われるようになった。
ダブルでうれしい「囍(ダブルハピネス)」に、自分なりの認識を主張する「真実(リアル)」、様々な激しい感情をシンプルに表現できる「AWSL(あ、オレ死んだ)」、そして青春時代と現在を結び付ける「爺青回(オレの青春カムバック)」など、ビリビリのユーザーは、ますます活気に満ちた弾幕文化を生み出し続けている。リアルタイム・インタラクションのスタイルで、弾幕は直観的に、特定のコンテンツに対する共感できる反応を他の視聴者と共有している。「今年の弾幕」は、過去一年のポップカルチャーのトレンドを総括しており、多くの人が共鳴する社会的感情の反映でもあると言えるだろう。(編集KN)
「人民網日本語版」2020年12月3日