地方公務員の遺族補償年金を巡り、受給資格で夫にのみ年齢制限の規定を設けているのは、法の下の平等を定めた憲法に違反するかが争われた訴訟の控訴審判決が19日、大阪高裁であり、志田博文裁判長は規定を「不当な差別的取り扱いであるとは言えず、憲法に違反しない」と判断した。
「違憲」として地方公務員災害補償基金(東京)の年金不支給処分を取り消した一審・大阪地裁判決を破棄、原告側の訴えを退けた。原告側は判決を不服として上告する方針。
男女差を設けた規定は国家公務員や会社員などの遺族補償年金にもある。判決は男性が家計を支える家族形態に基づいた支給のあり方に一定の合理性があるとの結論を導いた。
1998年に公立中学教諭の妻(当時51)を亡くした堺市の男性(68)が提訴。男性は地方公務員災害補償基金に対し、遺族補償年金の支給を申請したが、妻の死亡時点で男性が51歳と受給要件の55歳に達していないことから、同基金は不支給処分とした。
地方公務員災害補償法(地公災法)は、地方公務員である妻を亡くした夫の場合、妻の死亡時に60歳(現在は特例で55歳)以上であることを年金の受給要件とする一方、地方公務員の夫を亡くした妻は年齢に関係なく受給できると定めている。
判決で志田裁判長は、地公災法に基づき支給される遺族補償年金について、公務員の死亡により、独力で生計を維持するのが困難な遺族の生活を保護するのが目的と指摘。そのうえで同法の規定の是非を、家族形態や男女の労働環境の現状などを踏まえながら詳しく検討した。
志田裁判長は現在も(1)女性の非正規雇用の割合は男性の3倍近い(2)女性の賃金は男性より著しく低い(3)専業主婦の人数は専業主夫の100倍を大きく超える――ことなどから「妻を亡くした夫が独力で生計を維持できなくなる可能性は、妻が独力で生計を維持できなくなる可能性と比較して著しく低い」と判断。規定は合理的理由のない不当な差別的取り扱いに当たらず、法の下の平等を定めた憲法14条に違反しないと結論づけた。
2013年11月の一審判決は、規定について「配偶者の性別で受給権の有無を分けるような差別的取り扱いは合理性がない」と判断。同基金が大阪高裁に控訴していた。