【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)が24日夜開いたユーロ圏19カ国の財務相会合は、ギリシャ支援の再開に向けた合意を持ち越して閉会した。支援再開の見返りにギリシャへ課す年金支給額の削減などの財政改革を巡る溝が依然大きいためだ。事務レベルにいったん交渉を差し戻し、25日午後1時(日本時間午後8時)から再開する財務相会合での合意を目指して最終調整を急ぐ。
ユンケル欧州委員長(右)に出迎えられるギリシャのチプラス首相(24日、ブリュッセル)=ロイター
「長い夜になる」。24日夜の会合直前、欧州委員会のドムブロフスキス副委員長は記者団に協議は長時間に及ぶとの見通しを語った。しかし会合が開幕すると事態は一転し、わずか約1時間で終了。デイセルブルム議長(オランダ財務相)は記者団に「残念ながらまだ合意に達していない」と言葉少なに語って会場を去った。
財務相らが早々に協議を打ち切り、翌日に結論を持ち越したのは、支援再開の条件となるギリシャの財政改革案を巡る意見対立が解消し切れていないためだ。
ギリシャは22日に交渉打開へ新たな財政改革案を提示。いったんはEUなど債権団からも前向きな評価の声が上がった。しかし、その後の分析で企業向け増税に過度に軸足を置いた財政健全化という面が強く、成長を損ねかねないとの懸念を国際通貨基金(IMF)などが表明。年金支給額の削減の積み増しなど、一段の歳出抑制を求めた。
しかし、ギリシャのチプラス政権は支持基盤である中低所得者に負担を求める年金削減に反発。結局、財務相会合までに事務レベルで合意案を描けなかった。
チプラス首相は24日深夜から25日未明にかけて、ユンケル欧州委員長、IMFのラガルド専務理事、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁、ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長らとEU本部で会談。合意へ調整を続けた。年金削減を巡って双方がどこまで歩み寄れるかが早期合意のカギを握っている。